「専制的な指導者」に惹かれてしまう私たちの心理

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Journal of Business Ethicsに掲載された新しい研究が、荒っぽく冷酷な人物がリーダーとして受け入れられがちな理由を説明している。この振る舞いは文化的、宗教的、社会的、家族的な要因によってもたらされると、著者のアガタ・ミロフスカは述べている。

「反社会的な性格を持つリーダーも、フォロワー(信奉者)の目には魅力的に映るようです」とミロフスカはいう。「私たちの疑問の中心は、権威主義が有史以来の問題であることは知られているはずで、優れた指導者への賞賛が行われているにもかかわらず、なぜ人々は専制的な暴君に従おうとするのか? ということでした」

ミロフスカがレイモンド・チウ、リック・ハケットとともに行った調査では、専制的指導者を表す7つの形容詞が特定された。

1. 横暴な
2. 強引な
3. 支配的な
4. 命令的な
5. うぬぼれた
6. わがままな
7. やかましい

「こうした性質は、日常接する優れた監督者や経営者の特性としては忌み嫌われるように思われるかもしれませんが、既存の価値観を破壊するような産業、娯楽、スポーツ、超保守的な政治などの世界で、何百万人もの人々の心をひきつける世界的な人物を少し想像してみれば、これらの特徴は極めて既視感のあるものだといえます」とミロフスカは強調する。

この研究では、専制的なリーダーの不思議な魅力について、3つの可能性に着目している。

1. 「理想のリーダー」の原型イメージ

ミロフスカは「リーダーとはどうあるべきか」に対して私たちの抱く原型イメージが、過去の経験や文化的な教育、一般的な生活環境からかなり大きな影響を受けていると説明する。私たちがリーダーを探す場合、この原型イメージに最も近い候補者を選ぶ傾向がある。多くの場合、この原型イメージは「強い男」のキャクターと強く結びついている。

2. 道徳的な基盤

社会心理学者のジョナサン・ハイトらが提唱する「道徳基盤理論(Moral Foundations Theory)」は、人間は何事も(リーダーシップも含めて)2つの基本的なカテゴリーから判断するとしている。1つは個人的基盤(individual foundations:個人のニーズを第一に考える)であり、もう1つは結束的基盤(binding foundations:コミュニティのニーズを第一に考える)だ。ミロフスカの研究では、結束的基盤の支持率が高いほど、集団の利益に対する防衛的傾向が強いため、専制的リーダーがより魅力的になるという仮説が立てられた。

3. 世界観

もし人々が、自分の周りの世界を、危険で、予測不可能で、脅威的なものとみなしているなら、荒っぽくて問題が多いけれども、集団の安全を維持するためにより良い仕事ができると認識される専制的なリーダーを選ぶ傾向になるかもしれない。

北米の成人1100人以上を対象にした調査で、ミロフスカは2つの重要な発見を行った。

1. 専制的なリーダーを支持させるのは、愚かさでも邪悪さでもない

一部の人々にとっては、育った環境や人生経験、信念などから、専制的なリーダーに従うことは、自分自身や自分が属する集団にとって、誠実で賢明な選択であり、特に世界を危険な場所と見なしている場合にはそうである。

2. この傾向は、男性に多く見られる

これは、社会が強いリーダーを、タフで、しばしば男性的で、集団を守るために汚い仕事も厭わない人物として描いているためだと思われる。
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翻訳=酒匂寛

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