元高官は「シャー(パーレビ国王)の下でもイランの民主主義は既に根付いているとの誤った判断に基づき、カーターはシャーに圧力をかけ過ぎて、結果としてイランを失いました」と語る。イラン国内で恐怖の対象だったサバクの役割は、革命防衛隊がそのまま引き継いだ。最近では、ヒジャブの着用を巡って拘束されたイラン人女性の死を受け、イランでは抗議デモが相次いでいる。
そして、元高官は、イランの不幸な歴史から日本も教訓を得るべきだとする。「米国が自分の利益確保を最優先にするのは、何もカーター政権に限ったことではありません」。米国はカーター政権の人権外交だけでなく、常に米国の国益を第一に考えて行動してきた。2021年8月には、バイデン政権がアフガニスタンからの撤退を急いだ。結果的に当時のガニ大統領は戦わずに逃亡し、イスラム主義勢力タリバンが再び、アフガニスタンを占拠した。タリバンは昨年12月、女性の大学教育を停止し、国際社会から猛烈な非難を浴びている。
日本は今、安全保障政策の抜本的な見直しに忙しい。政府は台湾有事などに備えるためには、「日米の一体化」が必要だとしている。元高官は「日米の一体化が必要なのは日本です。米国がいつも一体化を必要とするとは限らないと考えておくのが賢明です」と語る。最近では、日本が核攻撃の危険に迫られたとき、米国が米本土への報復攻撃の危険を冒してまで、「核の傘」を提供してくれるのか、という懸念の声が出ている。
政府などが唱える「日米一体化」の主張に対し、「米国への盲従だ」という批判も出ている。しかし、核を保有する中国、ロシア、北朝鮮に囲まれた日本の地政学的な状況を考え、戦後から築いてきた日米関係を中心とした社会システムを考えたとき、「日米の一体化」に代わる責任のある主張をするのは簡単ではないだろう。
元高官は「日本は、政府や議会だけにとどまらず、米国のあらゆる層に働きかける必要があります。米国の今の世代が好意的でも、次の世代が同じとは限りません。継続的に、一体化の必要性を働きかけ続けるしかないでしょう」と話した。
過去記事はこちら>>