「光害」で夜空の明るさが毎年10%上昇、渡り鳥にも影響か

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人工の光による「光害」の急増によって、夜空は毎年10%近く明るくなっていることが、最新の研究で明らかになった。光害は天体観測の妨げになるが、星や月の位置を頼りに移動する渡り鳥にとっても脅威となっている。

ドイツ地球科学研究センター(GFZ)の研究者チームは、2011年から2022年かけて行った5万1000回以上の天体観測の結果、夜空が毎年7%から10%明るくなっていることを発見した。この研究レポートは1月19日の科学ジャーナルのScienceに掲載された。

今回の研究結果は、光害が毎年約2%というこれまでの予測の3倍以上のペースで増加していることを示している。人工の光が大気中で散乱し、夜空が明るくなることをスカイグロー(skyglow)と呼ぶが、研究チームは世界中の約2万地点での観測に基づき、ヨーロッパでは年間6.5%、北米では年間10.4%のペースでスカイグローが増加したことを確認した。

この研究を主導したChristopher Kybaによると、スカイグローの最大の原因は、ビルや屋外広告に用いられる照明だという。近年は従来のオレンジ色の街灯が明るいLED照明に切り替わったことも、光害の増加につながったとKybaは述べている。

ナショナルジオグラフィックによると、人工的な光の増加は睡眠パターンを乱し、人間だけでなく動物にとっても有害であることが証明されているという。ウミガメや渡り鳥は、移動の季節に月の光を頼りに移動するが、この移動が光害によって妨害される可能性があるという。

光害は、都市や工業地帯の光だけでなく、スペースX社の衛星の「スターリンク」などからも、もたらされている。オーストラリアのフリンダース大学のアリス・ゴーマン教授は、2020年の英紙ガーディアンの取材に、人工衛星の増加が夜空の眺めに「根本的な変化」をもたらす可能性があると警告していた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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