MLBはそれまでの2シーズン、コロナ禍のあおりを受けて総収益が落ち込んでいた。しかし2022シーズンには、コロナ禍から急速に回復を遂げた。その回復の速さは、「ボストン・レッドソックス」の本拠地、フェンウェイ・パーク名物の巨大なフェンス「グリーン・モンスター」に当たったボールが跳ね返るスピードよりも速い感じだ。
2022シーズンにおけるMLBの総収益(諸経費を差し引く前の総収入)は、108億~109億ドルに達した。これは、MLB自体も認める史上最高記録で、これまでの最高額だった2019シーズンの107億ドルを上回った。
原文記事が掲載された時点で、より重要な指標とされる純収益(net revenues:株式や利子などからの収益を含まない、コアビジネスからのみ得られた収入から諸経費を差し引いた金額[営業利益])は公表されていない。これは、MLBは株式を公開していないので、その財務情報も公開されていないためだ。前述した108億~109億ドルという総収益の数字は、匿名を条件に話してくれた情報筋から提供されたものだ。
MLBのコミッショナー、ロブ・マンフレッドは2022年11月1日、2022シーズンのワールドシリーズ第3戦が雨天順延となった後でメディアの取材に応じたが、その中で、MLBの総収益は110億ドルに迫ると明かした。今回判明した数字は、コミッショナーの言葉を裏付けるものだ。
コロナ禍の発生から2年を経て、MLBが総収益を再び成長軌道に乗せることができたのは、一つには、米国メディアとの放映契約が、2021年に最終年度を迎えたというタイミングの妙もある。これにより、パートナーである放送局3社との契約更新に向けた扉が開かれた。
2022シーズンは、FOX、TBS(ターナー・ブロードキャスティング・システム)、ESPNという全米ネットワーク3局と新たな契約を結んで迎えた最初の年となった。この3局との契約は、合計で1年あたり17億6000万ドルに上り、前シーズンの契約と比較して2億5000万ドル増と、大幅にジャンプアップした。
新契約では、ESPNから得られる放映権料は1億5000万ドルのダウンとなったが、MLBはこの収入減を、ストリーミング配信に関する追加契約で埋め合わせることができた。MLBは、全米ネットワーク局とのテレビ放映権契約に加えて、アップルおよびNBCと、ストリーミング配信に関する年額1億1500万ドルの契約にサインしている。