今後の原子力競争で「水冷式小型モジュール炉」が勝ち残る理由

フィンランドのオルキルオト3号炉(Getty Images)

原子力発電に未来があるとすれば、それは小型でモジュール化された水冷式になるだろうと、原子力研究の専門家はいう。

世界的権威であるジョージ・ワシントン大学のアルフレッド・カロ教授は次のように語る「現在、世界中には50種類もの技術があります。そのうちのどれか1つが経済的に成立するとなれば、市場全体を支配するでしょう。個人的には、それは水冷式小型モジュール炉(SMR)になると思います」

SMRの経済的優位性はしばしば話題にのぼる。工場で製造され設置場所に運ばれるため、従来の原子炉プロジェクトを悩ませる規制の迷宮、コスト超過、建設の遅れを回避しやすいからだ。

現在開発されている50の設計とコンセプトには、ナトリウム、鉛、ガス、溶融塩で冷却するモデルなどがあるが、カロは水冷式SMRにはさらに、積み重ねた歴史という利点があると考えている。

カロは「理由ですか? 水冷式原子炉とその燃料には、のべ2万年におよぶ運転経験があるからです」と、米国時間1月11日に行われたSecurity and Sustainability Forum(安全性と持続可能性フォーラム)主催の講演会で述べている。

「従来の技術に対して、経済的に競争力のある、ナトリウム冷却、鉛冷却、球形燃料などで解を出すのは非常に難しいと思います。なので、最終的にはすべての設計が水冷式になるでしょう。それが最も適しているからです。個人的には、そうなると考えています。水冷式の小型原子炉がたくさん生まれることになるでしょう。つまり、60年の全歴史の中で3回しか事故を起こしていない、最も支配的な技術と同じということです」

カロのいう3回の事故とは、原子力産業の成長を阻害することになった1979年のスリーマイル島、1986年のチェルノブイリ、そして2011年の福島の3大事故のことだ。

なお、The Union of Concerned Scientists(憂慮する科学者同盟)は、1966年にミシガン州で起きた部分溶融、1961年のアイダホ州での爆発、1959年のロサンゼルスでの部分溶融、1957年の英国カンブリア州で火災を加えた7件を「重大」事故と数えている。
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翻訳=酒匂寛

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