今後の原子力競争で「水冷式小型モジュール炉」が勝ち残る理由

フィンランドのオルキルオト3号炉(Getty Images)

そうだとしても、発電量1テラワット時あたりの死亡者数を比べると、原子力は太陽光や風力発電の死亡率に近く、石炭、石油、ガスよりもはるかに低い。

カロは「原子力は圧倒的に安全な発電方法です」と発言しているが、彼の評価には太陽光発電と風力発電は含まれていない。「ただし、リスクの認識は主観的なものです」

それよりも大きな障害はコストだという。「平均して、他のどの発電方法よりも高価につきます」

予定より11年遅れているヒンクリー・ポイントC原子力発電所の建設費をまかなうために、英国の電力料金支払者は、35年間平均電力料金の3倍を支払うことになる。

カロは「明らかにこうした投資を正当化するのは難しいことです」という。

最近稼働したフィンランドのオルキルオト3号炉(OL3)は、建設に17年を要した。「建設に17年もかかっては、投資家にとって有利な経済方程式を成り立たせることはできません」

これらの課題を解決するために、SMRは設計されている。

「歴史を振り返れば、現在の原子力技術が開発された60年代から70年代にかけて、第四世代以降のすべての選択肢がテストされて、最も安価だった水冷式原子炉が勝者となったのです。経済競争に勝つ技術が手に入ったら、それを止めることはできません。現在、商用原子炉はすべて水冷式だと思います。小型モジュール炉でも同じことが起こるでしょう」

カロは、アルゼンチンの原子力センターとバルセイロ研究所で指揮を行ったほか、スイスのポール・シェラー研究所の欧州核融合プログラム、ローレンス・リバモア国立研究所の核融合プログラム、ロスアラモス国立研究所の核物質・燃料科学チームなど多くのプログラムに関わった経験を持つ。また、全米科学財団(NSF)のプログラム・ディレクターも務めていた。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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