「王様ペレ」のようにブラジル新大統領ルラは熱帯雨林保護を約束する

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炭素クレジットは熱帯雨林を救えるか


森林伐採、気温の上昇、干ばつによって熱帯雨林がCO2を吸収する能力が制限されることが最大の懸念事項だ。土地所有者や先住民にインセンティブを与えて木を維持させることが不可欠なのはそのためだ。そうしたインセンティブは農業や伐採の経済的価値といった機会費用以上のものでなければならない。

ボルソナーロが2019年1月1日に政権を取る前、ブラジルは森林破壊を遅らせていた。国連気候変動枠組条約(UNFCC)は、各国政府が森林破壊を遅らせる目標を設定するREDD+プログラムの下でそれを認めた。UNFCCはその成果を評価し、排出削減を承認する。しかし、ボルソナーロはこの厳格なプロセスから手を引き、農民や開発業者が森林を切り開いて燃やすことを許した。これは迅速な資本回収だが、長期的には高くつく。

ルラはブラジルのREDD+プログラムを再び活性化させ、森林破壊に対抗するチャンスを国に与えるだろう。また、コンゴ民主共和国やインドネシアなど広大な熱帯雨林を持つ国々にも刺激を与えている。フリードリングスタインによると、この3カ国は世界の土地利用変化による排出量の58%を占めているという。

だが炭素クレジットの価格とその結果得られる報酬が代替案よりも高くなければならないという課題は残る。米イェール大学の経済学教授であるウィリアム・ノードハウスは、炭素の社会的コストは2015年には31ドル(約4100円)だったが、2030年には52ドル(約6900円)にまで増えると書いている。

熱帯雨林は年間76億トンのCO2を吸収している。REDD+の支払い制度によって生み出されるソブリン・クレジットは、この数字をさらに大きくするだろう。パリ協定では各国政府が「ソブリン・クレジット」を発行するため、価格が上昇し、森林保護やインフラ整備のための資金がより多く集まる。酒類メーカーのアンハイザー・ブッシュ・インベブ、総合資源開発企業のヴァーレ、石油会社ペトロブラスがブラジルの炭素クレジット市場に参入する可能性がある。

「REDD+のような、UNFCCCが認めたグローバルな制度だけがアマゾンを救うことができる。そして、ブラジルが新大統領とともに再び森林破壊を遅らせることで創出されるCO2排出削減を企業や政府が買い始めるときだけだ。つまり、アマゾンの熱帯雨林を守りたいなら、REDD+のソブリン炭素クレジットを買えばいい」と熱帯雨林諸国連合のエグゼクティブディレクター、ケビン・コンラッドはいう。

現在のCO2排出水準が続けば、カーボンニュートラルの達成そして記録的な温暖化、大洪水、氷河の融解といった気候の崩壊を回避する望みはほとんどない。熱帯雨林は気候変動に対する自然の解決策であり、まだ計画段階にあるテクノロジーよりも安価なものだ。しかし、森林は存在し続けなければならない。ブラジルのルラ大統領は、絶望している人々に希望を与えた世界のロールモデル、ペレを彷彿とさせながら国を導くことを約束している。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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