アメリカのボーナスのシステムはとてもわかりにくい。日本のように、夏と冬に臨時給与として払うことを労使ともに前提としている「あってしかるべき」性格のものとは異なる。
むしろ、会社側が人材を安定的に引き止めるためのバンドエイドのような対処的性格を持っているので、各社によってその計算方式はバラバラであり、公平を目指そうとすればするほど計算方式も複雑になっていて、さまざまな種類の「ボーナス」が存在する。
アメリカのさまざまな「ボーナス」
今回、アーンスト・アンド・ヤングが毎年支払うことになっていたのを取りやめたボーナスは、いわゆる「パフォーマンス・ボーナス」というものだ。
これは、業務年度の初めに目標を掲げ、その目標を達成した人に褒章の意味で払うボーナスだが、それ以外にも、会社自体が会社の予算達成率に応じて部門従業員や全従業員の給料に一定のパーセンテージをかけて支払う、ご祝儀のようなボーナスもある。
また、各部署の部門長に一定の予算を与え、その予算の範囲内で、自らの部下に貢献度に応じて配る、部門プール方式のボーナスもある。これは「がんばりましたで賞」とでも言うものかもしれない。
あるいは、クライアントなどからもらうギフトカードを貯めておいて、それを社員に一律に配ることもあれば、「クリスマス・ボーナス」といって、クリスマスパーティーの席で、サプライズで現金を全社員に配る、バブル経済の時代を彷彿とさせるボーナスもある。
優秀で他の会社からの引っ張りがあって、辞めそうな雰囲気のあるような社員には、「アニバーサリー・ボーナス」と言って、1年目が経ったときに、よくぞ残ってくれたという形のボーナスを提供することもある。
さらに、労務契約を更新するときに、「サイニング・ボーナス」と言って契約にサインしてくれたことに感謝の意を表明するため、その場限りで払うボーナスもある。
筆者の経験でも、それらのボーナスは課長クラスでも数百万円相当に上ることがあり、有能な社員をキープするための高いコストと、雇用者側に求められる柔軟性の必要を、いつも想起させられる。