筆頭著者の一人、マデリーン・トレンブレット(Madeleine Tremblett)は、「体重減少のための簡潔な介入(Brief Interventions for Weight Loss)」と呼ばれるデータを分析した。これは、英国の一般開業医による体重減少のための介入の効果を検証する目的で集められたデータで、2013年中盤から2014年末にかけて、肥満患者たちがこの臨床試験に参加した。
臨床試験の前に、一般開業医たちは、体重を減らすことの重要性を患者に伝える方法を説明する研修動画を視聴した。肥満患者を診察したあと、一般開業医たちは、患者に対して体重の減らし方について簡潔なアドバイスをするか、自治体が運営する体重管理サービスに紹介状を書いた。
アドバイスを受け、また会話の録音に同意した159人の患者(男性62人、女性92人※未確認5人、平均年齢58歳)のなかから、今回の研究における分析対象がランダムに抽出された。
「ほとんどのアドバイスは『表面的』であり、一方的に内容を伝えるだけだった。汎用のアドバイスを受けた患者が質問しないかぎり、患者個人に合わせた提案がなされることはなかった」と、著者らは述べている。
44件の診察において、一般開業医は「食生活の改善」を勧めた。食事量を減らしたり、特定のタイプの食品の摂取量を減らしたりといったもので、例えば患者に「炭水化物を控えましょう」と伝えた。一般開業医が、食生活の改善と運動の増加の両方を勧めた診察は、わずか14件だった。
トレンブレットはプレスリリースで、「本研究は、肥満患者に対して、機会をみて体重について話す方法に関する明確なガイドラインが、医師にとって必要であることを示している」と述べた。「このようなガイドラインは、不名誉なステレオタイプを助長することを避けつつ、体重を減らしたいと思っている患者を、効果的に手助けするのに役立つだろう」
この研究では、一般開業医たちが患者を適正体重に導くのに極めて不適切であることに焦点が当てられている。彼らのアドバイスの多くは、科学的根拠に基づいていない傾向があった。単に運動を増やせと言ったり、カロリー摂取量や食生活を少しばかり変化させるだけのやり方は、肥満を解消するには非効率的であることが判明している。にもかかわらず、一般開業医は患者にこうした助言を続けていた。
「ちょっとした行動変化が大きな体重減少につながるというのは、よくある神話だ。本研究により、肥満に関する誤解や、科学的根拠のない思い込みが、学術文献や報道のなかに蔓延している現状が浮き彫りになった」と著者らは述べ、「根強くはびこるこうした非科学的言説に対抗するための特別な研修を受けないかぎり、医師たちはこれらを助長するおそれがある」と警鐘を鳴らした。
(forbes.com 原文)