Anifie CEOの岩崎洋平(左)と、筆者(右)Courtesy of the Author
吉川:最後の質問です。今後、メタバース業界はどうなっていくと思いますか?
岩崎:これまでネットの世界は、「Winners take all(勝者総取り)」と言われてきました。私は、米スタンフォード大学でMBAを取得しましたが、そのとき、インターネットのプラットフォーマーとして、「Winners take all」を実現する方法を繰り返し、叩き込まれました。つまり、プラットフォーマーとしての勝利の鉄則です。
毎年1兆円をメタバースに投資しているといわれるメタ(旧フェイスブック)が、メタバースの覇者になった場合、必ず、プラットフォーマーとして「Winners take all」を実現するポイントをおさえるので、メタバースは、マーク・ザッカーバーグCEO率いるメタに独占されることになるはずです。
Anifieはメタと戦ってメタバースの覇者になり、市場を独占できるとは考えていません。むしろ、ブロックチェーンを通じて、特定のプラットフォームに依存しない「Community of Communities」がたくさんできると考えています。
AKB48の投票権と同じように、ブロックチェーンの特定のトークンを持っている人は、あるコミュニティの意思決定に投票をすることができます。また、特定のトークンを持っている人だけが参加できる「部屋」がネット上にいろいろと存在します。
つまり、あるトークンを持っているかどうかが、コミュニティへの帰属の有無を決める時代が到来しています。これは、プラットフォームのユーザーかどうかがコミュニティへの帰属の有無を決めてきたこれまでとは対照的です。
人間が、「コミュニティに帰属したい」という気持ちは、人間の最も本質的な欲求です。「いつプラットフォームに裏切られるかもしれない、あるいは、プライバシーを侵害されるかもしれない不安な場所」では、強い帰属感は生まれない、と米国のティーンエージャーたちに教えられました。コミュニティのルールが、ブロックチェーンに刻み込んであって、数理論上、絶対に裏切ることができないコミュニティが、ブロックチェーンによって実現します。
このコミュニティが存在できる場所として、メタバースが重要になると思っています。人間がコミュニケーションをとるときには、視覚、聴覚、触覚などの複数のモダリティを使って、情報の収集が行われますが、テキストメッセージのモダリティは1です。これに対して、メタバースでは、相手のいる場所や、着ている服、表情、髪型、ジェスチャーなどのさまざまな情報が、話している内容に加えて追加されます。
ブロックチェーンによって、いろいろなタイプのメタバースが、お互いに、協力し合えるようになると思います。さまざまなメタバースが“連合軍”を組むと考えています。
例えば、セレブタレントのメタバースで、タレントのアバターを手に入れた人が、ハイブランド・ファッションのメタバースに入って、デジタル・アパレルを手に入れた後に、今度は、タレントのアバターに、ハイブランドのアイテムを付けてみるということで、二つの世界をつなげた新しい世界を自分で想像していく世界観です。Anifieではこれを実現するのに必要な特許も出願し、新たなデジタル空間の実現に果敢に取り組んでいます。
吉川:連合化したメタバースの間を行き来できる世界観って面白いですよね。そう考えると組み合わせは無限大になりそうですね。今後の動きを注視したいと思います。