ウサギが、気候変動における「炭鉱のカナリア」になる可能性

Getty Images


高温化によってウサギ養殖はより困難になり、扇風機やエアコンなどの冷房設備の導入が必要になるため、農家にとってのコストは上昇する。高温下では、ウサギの生殖能力が低下するのだ(ちなみに、これはヒトにもあてはまるようだ)。一度に生まれる子の数が減少し、出生体重が軽くなり、幼獣の死亡率が上昇する。

ウサギ養殖のコストが上昇すれば、医学研究に影響が及ぶだけではない。ウサギ肉が、食料源としても国内産業としても重要な地位を占める、エジプトなどの国々は困難に見舞われるだろう。

ウサギが高温に弱い理由の一つは、汗腺が発達していないためだ。ただし、ジャックラビットなど、乾燥した砂漠気候に適応した種もいる。一方、ユキウサギなど、純白の冬毛と、暖かい季節の夏毛をもつ種は、降雪パターンの変化により、肉食動物に捕食されるリスクが高まるかもしれない。

ある研究によると、気温が摂氏約32度に達すると、ウサギはジャンプするのをやめ、34度では目に見えて呼吸が荒くなる。現在の生息地がますます熱帯気候に近づくにつれ、ウサギの個体群は、徐々に高緯度地域へと移動するという予測もある。

地中に生息し、ウサギが体内に取り込む寄生生物も、高温化に伴って増加する可能性がある。免疫システムの反応次第だが、これは、ウサギ個体数の減少につながる可能性があり、他の家畜やヒトにさえ影響が及ぶかもしれない。幼い子どもたちは、泥遊びをして体調を崩すことがあるからだ。

このように、気候変動の影響は、ヒトにとっても野生動物にとっても、多様で多面的なものだ。

カナリア諸島など、一部地域のウサギ個体数は増加する一方で、愛らしい純白のユキウサギはますます希少になるだろう。全体としては、気候変動の負の影響のほうが大きくなりそうだ。世界のウサギ野生種の3分の2以上は、気候変動によって絶滅の危機に陥るという予測もあるほどだ。

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

ForbesBrandVoice

人気記事