将来に備えた経済計画としては、よく「消費の平準化」が唱えられる。これは、若いうちに消費と借金をたくさんしておいて、働き盛りの中年期にそれを返済して十分な額を貯蓄し、その貯金で老後を過ごす、というものだ。
ただ、老後に必要な貯蓄の額を計算するのは難しい。将来の金利は分からないし、家族の構成やニーズは変わるかもしれない。そして一番の問題は、自分がどれくらい長生きできるかが分からないことだ。
老後に必要な額は、どうすれば分かるだろうか? 将来に備えて、毎年少しずつ支出を減らすことを提案する人もいるが、計画よりも少しでも長生きすれば経済的に厳しい状況に置かれるリスクがある。
しかし、老後に旅をすることを考えている人にとって朗報となる調査結果が、米シンクタンクのランド研究所により発表された。研究チームは、ミシガン大学が米国の約2万人を対象に定期的に実施している「健康・退職調査(Health and Retirement Survey)」で集められた郵送アンケートのデータを分析した。
データからは、老後の旅行に必要な金額は人々が思うより少ないことが示された。その理由は個人によりさまざまだろうが、50代よりも80代の旅行支出が少ない理由は、旅行ができないからではなく、旅行をしたくないことにあるようだ。
人は年を重ねるにつれ、やりたいことが変化する。例えば、高齢になるにつれ旅から得られる満足感は減ると言う人もいる。特に、健康状態が良くないと、旅行への関心はますます減る。
老後の旅行支出が意外と少ないのはもしかしたら、ようやく旅行に出る時間と金銭面での余裕が得られても、単に旅をしたくなくなることが理由なのかもしれない。
(forbes.com 原文)