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2022.12.31 12:00

なぜいま「KOGEI」なのか 世界で新しい工芸の価値が高まる理由

東京芸術大学名誉教授(金沢21世紀美術館特任館長)秋元雄史さん=12月、KOGEI Art Fair Kanazawaで


一方で、現代アートの方から見ると、拡張する現代アートの領域というのがあり、その中で、歴史的な文脈や過去を参照するような作品も出てきます。常に変化し、アートの表現がどんどん拡張していくなかで、工芸的なアプローチも取り込まれるようになってきました。アーティストは自己の欲求に忠実に、自分の勘で新しい表現を求めて突き進んでいっています。そこに工芸と現代アートの中間領域に存在するような表現が誕生してきているのだと思います。
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こんな考えで実施した「工芸未来派」展から10年が経ち、だいぶこの「現代アート化した工芸」に対する見方が共有されてきたと思います。こうやって広がっていくのはうれしいことですね。

「工芸未来派」展は、ニューヨークや台湾にも巡回しました。海外でも近い動きが生まれており、現代アートに近い工芸の動きが盛んになっています。そんな動きの中で、日本の「KOGEI」が受け入れられつつあるのだと思います。

世界中で火がつく、工芸ブーム


──工芸(クラフト)自体の評価も以前より高まっているように感じますが、世界的な潮流はいかがでしょうか。
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日本だけでなく世界的な動きとしても、クラフトの世界が拡張して、アート化が進んでいます。

ことし5回目が開かれた金沢・世界工芸トリエンナーレの審査員の、例えばメトロポリタン美術館のアソシエイト・キュレーター、元国立故宮博物館館長など国際的な顔ぶれをみてもわかりますね。また、ファッションブランドのロエベは今日の工芸を顕彰する「Loewe Craft Prize」を世界に向けて発信しています。

また、イタリア・ヴェネチアで開かれた国際的な展示会「ホモ・ファーベル」は世界の伝統工芸を取り扱っていますが、プロダクト自体ではなく、作ること(クラフトマンシップ)にフォーカスした展示が印象的でした。

ロンドンの現代アートフェア「Collect」やアメリカ「SOFA Chicago」など、クラフト系の現代アートフェアも相変わらず盛んです。工芸の国際的な交流を促進するような催しがさらに増えていく気配です。

作家自身の動きも重要ですね。工芸と現代アートを行き来して新しい表現に挑む桑田卓郎、青木千絵、牟田陽日らも目を離せません。ちょうど桑田は、ロンドンの「ヘイワードギャラリー」という美術館で世界の新潮流の工芸を紹介する企画展で注目を集めています。国内的にも陶磁の世界で権威のある日本陶磁協会賞を受賞しており、伝統的な世界からも評価されています。現代アートと工芸の一見両極端な世界から評価されているという点がこれまでの作家とは異なる点で、先ほどあげた作家たちも同様です。

(いま知っておくべき工芸作家の記事は、1/1公開)

秋元雄史さん

──「KOGEI Art Fair Kanazawa」の狙いのひとつとして「KOGEIのマーケットを作る」ことを挙げられています。開催当初からどのような変化を感じますか。

いままで工芸は、茶道や花道をたしなむ人が使用する道具として広がってきましたが、アート作品としてさらに広がっていくと思います。コレクターも変化してきており、現代アートを収集している人たちがコンテンポラリーな工芸も購入しています。そういった人たちのニーズに答えるためにアートフェアのお手伝いをしました。開催当初はお客さんに情報を届けるのに苦労しましたが、だんだん認知度が高まり、今回はこれまで以上のお客様がおいでになっていると思います。来場者は、北陸地方の方たちと関東方面からとで半々程度。

現代アート全般では、作品を収集する方が増えているようで、その影響もあるのだろうと思います。
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文=督あかり 写真=広村浩一(Moog LLC.)

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