ネバダ州カーソンシティに本拠を置くレッドウッド・マテリアルズは先月、11億円を投じて同州に建設中の工場で生産するリチウムイオン電池のカソード材をパナソニックに供給すると発表した。同社は、東海岸にキャンパスを建設するため、サウスカロライナ州チャールストン近郊の工業団地キャンプ・ホール(Camp Hall)に600エーカーの土地を取得した。
同社は将来的に、この工場で1500名の従業員を雇用する計画だ。このクローズドループの工場では、使用済みバッテリーから希少金属を回収して再利用し、新しいバッテリーの製造に必要なアノード材とカソード材を生産する。米国では、南東部や中西部でバッテリー工場の建設が相次いでいる。
レッドウッド・マテリアルズの新工場は、この種の施設としては米国最大規模だ。着工は2023年初めで、同年末までにリサイクル事業を開始するという。稼働すれば、100ギガワット時分のアノード材とカソード材を生産する予定だ。ストラウベルによると、これはEV100万台に相当するという。
「インフレ削減法の成立により、バッテリー製造の大きな波が米国に押し寄せている。我々としては、米国全域に拠点を分散させることが望ましい。南東部では、ミシガン州とジョージア州の間にバッテリー・ベルトと呼ばれる地域が形成されており、バッテリー製造が拡大している。我々の狙いは、この地域の真ん中に拠点を設け、バッテリーメーカーを支援することだ」とストラウベルは話す。
ゼネラルモーターズやフォード、現代自動車、トヨタ、BMW、ボルボ、パナソニック、SKバッテリー、エンビジョンAESCなどの自動車メーカーやバッテリーメーカーは、今後市場に投入される数多くのEV向けにバッテリーパックを製造するため、工場建設に累計で数百億ドルを投資する計画だ。
これらの工場のほぼ全てが、バッテリーセル内で電子を放出・捕獲する部品であるアノード材とカソード材を中国や韓国、日本のサプライヤーから調達する必要がある。しかし、最近施行されたインフレ削減法により、自動車メーカーは北米のサプライヤーから調達した部品を多く含むバッテリーを使用する必要に迫られており、レッドウッド・マテリアルズをはじめとする米企業にとっては大きなビジネスチャンスとなっている。
「インフレ削減法は、米国でバッテリーやEVを製造するほぼ全ての企業に対し、国内のサプライチェーンを確保することを明確に要求している。今は、非常にエキサイティングな時だ」とストラウベルは話す。