ドラマ「silent」大ヒット支える 耳の聞こえないアイドルの挑戦


裏の手話指導・監修では普通は見られない現場で制作の仕方を学びました。ストーリーに沿って日本手話か声をつけた方が良いのかなど、自分でできるだけ考えて指導しています。表から私の仕事は分かりにくいですが、たくさんの人と作品を作り上げていくのは本当に大切な経験で、表舞台でも役立つと考えています。

──アイドルデビューを目指す「ZeroProject」に参加してますが「手」で歌うステージの魅力は?

「ZeroProject」は手話パフォーマンスはまだなく、踊りだけなんです。聞こえるメンバーとステージに立ってますが、将来経験を重ねて自分のパートは手話で表現して歌うことができればいいなと思っています。

それとは別に、YouTubeでは自分で手話パフォーマンスを発信してます。手話が踊りのような見られ方をしてしまうこともありますが、私は声の代わりに手話で歌うイメージなので、高い声/低い声、声量も自分の手を使って表現します。今後有名な歌手とのコラボができたら良いですね。

今までオーディションに挑戦しても、聞こえない人を入れた経験のない芸能事務所が多くてどうしたらいいか分からないと言われてきました。Zero Projectの場合、聞こえなくても歌って踊りたい、表現したいからチャレンジして「やる気ある?頑張れる?」と言ってもらって合格しました。手話などの情報保障もないですし、ダンスは周りを見て学んで練習するなど大変さもあります。

ファンのみなさんは、アイドルには普通に歌ってほしいと思うんです。でも5人のうち1人だけ私はマイクを持っていない。そこから「え、なんで?」と興味をもってくれて、チェキの撮影会では「聞こえないの?すごいね」とか「筆談って楽しいね」と言ってくださる。ろう者はかわいそうで大変そうっていうイメージではなく、すごく楽しそうに踊っている姿を知ってもらうことは嬉しいですね。

耳の聞こえないアイドル 中嶋元美

──ライブ配信サービス「SHOWROOM」で筆談でファンとのやり取りを続けるなかでの気づきは?

もうすぐ5年たちますが、最初は見てくれる人があまりいなかったんです。私の場合、無音の状態で筆談するだけなので。最初は「筆談、何それ?聞こえないの?」とよく言われたけど、それでも続けると視聴者が増えていきました。

スマホが主流で手書きを見ること自体減ってきましたが、怒っている時は殴り書きになるし、優しく伝えたい時は丁寧に書くし、眠い時は文字が波うっちゃいますよね。声がなくても気持ちは伝わると思います。

手話を勉強中なので手話で話したいという人も多くなってきましたが、手話を優先にしないのは見る人が決まっちゃうから。筆談でお互い対等な立場で、コミュニケーションが取れるようにファンの人たちを増やしていきたいです。

──「silent」を通じて手話に興味を持つ人も増えましたよね。

例えば、美容院で予約時に「耳が聞こえないので、スマホで筆談でお願いします」と伝えておくと、最初から「UDトーク」(コミュニケーション支援アプリ)を準備してくれることもあってびっくりしました。「実はドラマを見て、便利ですね」と美容師さんが話していて、そういうことが増えたので、ドラマの効果はすごいなと思います(笑)



──これから挑戦してみたいことを教えてください。

たくさんある夢のひとつとして、来年はミュージカルに挑戦したいです。

世界ではろうの役者が歌に合わせてパフォーマンスをする舞台がありますが、日本ではまだありません。ろう者のパフォーマンスだけでなく、聞こえる人たち向けのオーディション参加し「聞こえないけどできます!」と、挑戦を続けたいと思っています。

文=督あかり

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