目黒蓮演じる元恋人に再会した、川口春奈演じる紬が「音のない世界」で再会するストーリー。手話を使った声なき本格的な演技が話題を呼んでいる。
撮影現場を支えるのが、耳の聞こえない若者だ。手話監修者のひとり、中嶋元美は手話パフォーマーとして活躍する「手」を使った表現者だ。東京パラリンピックの開会式にキャスト出演したり、「もっちー」の愛称でアイドル活動をしたりしている。
ドラマ主人公の想のように中途失聴で、高校生の頃に突然耳が聞こえなくなった。当事者だからこそ感じるドラマのリアリティや、本人の挑戦について聞く。
──「silent」での手話監修で、同世代として演者たちに伝えたかったことは?
「silent」の撮影現場では手話監修として、私も含めてさとり(*手話動画「さとりしゅわにっき」などを配信する若者)と、ろう者2人で指導しています。ほかに、手話コーディネーターでコーダ(*聞こえない・聞こえにくい親をもつ子の意味)の方が2人です。気づいたことや生活しているなかで演者に伝えたいことは手話通訳の方を通じて、全員で6人体制でコミュニケーションをしています。
今回私が、手話監修に選ばれた理由は、役者たちと年が近く、中途失聴の人が主人公の物語で、経験が似ているからです。特に普通の手話だけでなく、若い人が使う手話なども使ってもらっています。
演じ方については基本的に役者に考えてもらいお任せしています。ただ、想像ではなく私の実際の経験の話を聞いてもらった上で演技してもらっています。
手話は言語なので、振り付けなどとは違います。ドラマを見ているろう者も必ずいるため、言葉として学んでもらいたく、心を込めて演じてほしいという思いをお話しました。いまでは役者さんたちと手話でコミュニケーションができるようになって、楽しんでいます。
ドラマ「#silent」で多用される手話での会話。
— 「silent」川口春奈×目黒蓮(Snow Man)毎週木曜よる10時OA 木10ドラマ公式 (@silent_fujitv) November 20, 2022
それを支えるスタッフのひとりが、手話監修・指導の中嶋元美@pinklovemoto さんです pic.twitter.com/RQdPGU6W43
──「silent」は12月22日に最終回を迎えますが、ヒットの理由はなんだと思いますか。
人気の理由は色々あると思います。まず、私と同年代の若い人たちの実際の恋愛の様子が丁寧に表現されているので、本当に主人公の想みたいな男性が実在するような体験ができます。
私がろう者として感動するのは、中途失聴の言語経験が含まれているということです。想のモデルは私ではありませんが、監督とプロデューサー2人に私の経験を話した上で撮影され、高校生で耳が聞こえなくなった私と同じような立場に寄り添っていることが感じられます。想の過去を振り返るシーンがありますが、撮影中に私も過去を思い出しながら感動しています。
──「silent」手話監修で、役者さんとのやり取りで印象的だった出来事は。
私は手話を教える立場ではありますが、役者さんによって個性があって違うのが面白いです。紬役の川口春奈さんとは同い年というのもあって、女子トークをすることも。
役者さんも最初は手話通訳が必要でしたが、撮影から2カ月位すると「この手話、何?」とか自分から聞いてきてくれて、3カ月経つとモニターで演技を確認する役者とは離れた場所にいても「こうやって変えたいな。見て見て!」と私が手話で表すと、すぐに変えてくれたりとてもスムーズに意思疎通ができるようになりました。