メンバーはリーダーからのシグナルを受け取り、意識的・無意識的にその行動を模倣している。ミラーニューロンの研究から得られた重要な洞察は「望ましい行動を示せば、従業員がそれに従うようになる」という、古くからあるマネジメントの定説を補強するものだ。チームにコラボレーションを求めたいのであれば、まず自分がコラボレーションの良い見本となる必要がある。
ミラーニューロンの働きが共感に関連する(Getty Images)
リーダーとして、メンバーの表情や体勢をミラーリングすることで、瞬時に共感が伝わり、周囲の人の気持ちを理解し、その気持ちを汲んで対応を決めるという意思表示になる。このことは、ボディランゲージによる合図をミラーリングすることで、結果として「つながっている」という感覚を得ることが、協力的なチームづくりのために非常に有効なことを説明している。
また、ボディランゲージが相手の会話への参加を促したり、抑制したりする効果も実証されている。たとえばある実験では、アムステルダム自由大学の学部生グループが、8分間の映画を鑑賞した後、他の学生にその映画についてできるだけ詳しく説明するよう求められた。実は聞き手はリサーチアシスタントで、半数にはポジティブな聞き方(笑顔、うなずき、体を開いた状態)を、残りの半数にはネガティブな聞き方(しかめっ面、無表情)をさせていた。
肯定的な聞き手に対して映画を説明した被験者は、より抽象的な表現で、登場人物の考えや感情など、目に見えない部分も説明していた。また、映画がいわんとしていることについて、自分自身の意見をより多く盛り込むことができていた。それに対して、否定的な聞き手に対しては、客観的な事実や具体的な内容のみに焦点を当てて話していた。
聞き手の笑顔やうなずきは、興味や同意のシグナルであり、それによって話し手はより個人的な洞察や推測を共有するようになるという説明が行われている。これに対して否定的なボディランゲージは、防衛反応を引き起こし、話し手を事実という相対的な「安全」に引き戻すのだ。コラボレーションとリーダーシップの文脈でこれが意味することは、単にボディランゲージを調整するだけで、リーダーはチームメンバーが情報を処理し報告するやり方に影響を与えることができるということだ。
また、リーダーは話しながら、聞き手は自分の言葉や非言語的な合図だけを評価するだけでなく、自動的に自分の声を「読んで」、隠された意図や隠された意味、偽装された感情、予想外の驚きなど、要するに聞き手が言われたことを信頼できるかどうかを判断するための手がかりを常に探っていることを心に留めておく必要がある。