ビジネス

2022.12.22

サイバー藤田晋氏ら語る「後継者育成」 経験や勘の言語化が重要

Getty Images

後継者をどう育成すべきか。そう苦心するリーダーは多いだろう。外部から人材を招き入れたものの、短期間で交代に至るというケースもある。

12月14日、フォースタートアップスが開催した成長産業カンファレンス「FUSE」では、サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏とマネーフォワード代表取締役社長CEOの辻庸介氏が、Plug and Play Japan執行役員CMOの藤本あゆみ氏をファシリテーターに、後継者育成について語った。


かつての起業家は“うさん臭い”象徴だった


──現在の日本のスタートアップエコシステムはどのように映っていますか。自身の起業時からの変化について教えてください。

藤田:僕が起業した頃(1998年)は、起業家がそもそも少なかったですね。

先輩と言えば、ソフトバンクの孫さんやパソナの南部さん、カルチュア・コンビニエンス・クラブの増田さんたち。

20年以上経った今は、環境が整ってきたという感覚があり、サイバーエージェントでも、新規事業の立ち上げを望む若者が多く入社してきます。

社内にはバックオフィスによる起業支援の部隊がいるのですが、見事なもので、必要最低限なものを用意して、あっという間に会社が立ち上がり、人材もすぐに集めることができます。

ただ、社内では一気に優秀な人材を集めることができても、社外であればそんなにうまくいきません。今の仕事をやめさせてジョインさせるというのは難しいですから。

日本のスタートアップエコシステムのネックは、優秀な人材を集めるという点ですね。

また、もう一つ改善されたのは、起業家の社会的ステータスが向上したことです。

僕が起業した頃は、起業家ではなく“青年実業家”と呼ばれ、うさん臭い人間の象徴みたいな扱われ方でした。価値観の違いや嫉妬も当然あったとわかりますが、ステータスが数段上がったことが、起業家を目指す人が増えた要因だと思います。

辻:僕も起業時は会社の立ち上げ方もわからなかったので、まず資金調達の仕方などをグロービスの高宮さん、クラウドワークスの吉田さん、けんすうさんに、お茶しながら聞きに行っていました。

ビジネスで重要なヒト・モノ・カネ、情報で言えば、現在は政権がスタートアップ育成5カ年計画を発表したことで、ちゃんと事業をやっていれば資金のサポートもありますし、情報も溢れています。

一方、藤田さんのお話のように人材の流動性に課題があり、モノ・サービスをゼロから立ち上げる難しさも当然あります。

藤田:今はメンターこそ多くいますが、誰の言うことを聞いたらいいか迷ってしまうかも知れません。起業家の苦労話は溢れていて、それに憧れる人も一定数いますが、それは遠回りでもあります。そこで語られている苦労は、起業家自らがやる必要は1ミリもなかったりします。

起業は、使えるものは全部使って、利用できるもの全部利用して、やっと成功できるかどうかという世界。

やるべきこと、やるべきでないことを判別するために、メンターや経験者にアドバイスを聞くのであれば、それは非常に有用でしょう。
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文=小谷紘友 編集=露原直人

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