北極海航路開通、沖ノ鳥島が水没? 気候が安全保障上の大リスク

京都大学大学院総合生存学館准教授の関山健


──2050年の「沖ノ鳥島問題」について教えてください。なぜ日本経済に大きな影響をもたらすと言われているのでしょうか。また、このような気候安全保障のリスクが高まるなかで、日本はどのような対策が必要になるでしょうか。

日本最南端の沖ノ鳥島は、日本の国土面積約38万㎢を上回る約40万㎢の排他的経済水域を支える。その海底にはコバルトやニッケルなどの資源も豊富とされる。

ところが、2004年時点でも満潮時には最大16cmしか海上に出ていなかった。それから既に4、5cmほど海面上昇している。国連海洋法条約は、満潮時に海中に没する島には領海も排他的経済水域も認めていないため、このままでは早晩沖ノ鳥島周辺の排他的経済水域を失うことになる。

中国は、今でも沖ノ鳥島を島ではなく岩だと主張し、日本の排他的経済水域を否定している。水没すれば、いよいよ中国がこの海域での活動を活発化させても何ら不思議はない。場合によっては、沖ノ鳥島周辺海域は、日本と中国の間での衝突事故や偶発的な争いすら危惧される危険な海域となりうる。

日本以外にも海面上昇で領土を失う国は多い。例えばある年を基準にその後水没しても領土とみなすなど、国際的なルール作りを日本に主導してもらいたい。また、アジア近隣諸国の気候変動に対する脆弱性を下げるような開発支援は、資源対立や移民発生を防ぎ、結果として日本自身の気候安全保障リスクを下げることにもなる。


せきやま・たかし◎1975年、愛知県生まれ。財務省、外務省で勤務後、東京大学、北京大学、ハーバード大学の各大学院で学ぶ。2019年より現職。博士(国際政治)、博士(国際協力)。

文=関山健、写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN No.102 2023年2月号(2022/12/23発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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