ついに核融合研究でブレイクスルー、クリーンエネルギーは気候危機を救う?

ローレンス・リバモア国立研究所のプリアンプ支持構造の内部(ローレンス・リバモア国立研究所/DANIEL JEMISON)


しかしながら、エネルギー源としての核融合を開発するための時間軸は、ただちに炭素排出量を減らすことを必要としている直近の気候問題を救うにはあまりにも長すぎる。「核融合は気候変動に対応するためにはすでに遅すぎる」とカーンはいう。「私たちはすでに気候変動による破壊と地球規模で直面しています。2022年の夏だけでもパキスタンの洪水、中国と欧州の干ばつが起きています」専門家は、これらの問題や炭素削減への対策は何年何十年も待つことができないと警告しており、ガンビールは、2050年までのネットゼロ達成に関する複数の分析結果が、世界の発電を2040年頃までに完全脱炭素すべきであることを示していると語った。カーンは、長期と短期両方の戦略を持つことが重要であると強調し、核分裂や再生可能エネルギーなど既存の低炭素技術を活用しつつ「長期的に核融合に投資」すべきであると付け加えた。

核融合の実用化にはどれだけ時間がかかるのか。核融合の分野では「ほんの数年先が何十年」というジョークが長年にわたり繰り返されてきた。フォーブスが話を聞いた専門家全員が、この発見の重要性を強調しつつ、核融合の実用化を待ち受ける技術的、科学的な課題を指摘している。

ミシガン大学のアレンは、自分は核融合がいつ準備が整うかに関して優れた予言者ではないと断りつつ「まだ数十年先」だろうと推測し。ただし民間、公ともによる膨大な数の発見が、これを前倒しする可能性があると彼は付け加えた。UCLAのカーターは「投資と革新の意志」について話すことのほうが、時間よりも重要であると述べ、最近のホワイトハウスによる核融合を推進するイニシアチブや、この分野に対する多大な民間投資を例に挙げている。イニシアチブの中には、パイロットプラントを10年かそれ以内の時間軸で開発する目標のものもあると彼は付け加えた。

科学者たちは何十年も核融合を追求し、豊富なグリーンエネルギー源として注目してきた。グリーンといわれるのは二酸化炭素を排出しないからだが、それでも廃棄物はあり、副生成物の中には放射性物質も存在する。ただし、これらは管理可能で、核分裂によって生成されるものより危険ははるかに小さい。

核融合は使用する燃料の豊富さ故に無限に近いエネルギー供給源になりうる。主要な燃料は重い形態の重水素であり海水の中にある。「全世界に十分なエネルギーを何十万年あるいは何百万年供給でる」量だとカーターはいう。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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