温暖化が進んでも地球から「冬」はなくならない

四季はなぜあるのか?(LIBRARY OF CONGRESS AND NATIONAL WEATHER SERVICE)

今年の感謝祭、私は多くのことに感謝している。その中には批判的思考の能力と基本的な科学リテラシーも含まれている。毎年今頃になると、人々が「冬には地球温暖化の話を聞かないね」とか「気候変動が起きているのなら、どうして今日、ボストンには雪が降っていないの?」といったことを言うのをよく耳にする。世の中には、グリーンランドは緑が多い、砂漠は暑いだけだと信じている人がいるらしいことを考えれば、驚くことでもないのだろう。なぜ「冬」という季節の存在が、地球温暖化や気候変動と呼ばれるものの反証にならないか、その理由を説明しよう。

地球の気候は、自然変動と人間活動が組み合わさで変化する。温室効果ガスの増加、土地被覆の変化、人口増加などが気候を変化させ、天気、海面水位、水循環、農業生産性、社会基盤、その他数多くのことに影響を与える。それらすべてが明らかなのに、なぜ地球温暖化が続いていても毎年冬が来る理由を、基礎科学が説明している。

四季は、私たちの地球の回転軸が約23.5度傾いているという事実によって起きる。米国議会図書館ウェブサイトによると「多くの人が、夏は地球が太陽に近く、冬は遠いから気温が変わると信じています。地球は7月に太陽から最も遠くなり、1月に最も近くなります」では、何が起きているのか? 夏に地球が太陽に向かって傾くと、エネルギーがより直接的に地球に注がれる。冬にはエネルギーが分散される。それは、懐中電灯でテーブルを垂直に照らした時と角度をつかけて照らしたときに似ている。さらに議会図書館ウェブサイトは続く。冬には「長い夜と短い昼が、地球が温まるのを妨げます。だから、冬があるのです」


過去80万年の大気中の二酸化炭素濃度。414.7ppmの点(右上隅)は2021年を表し、最近の自然変動からかけ離れていることを示している(NOAA)

ちなみに、地球の軸の傾きと地球が太陽を周回する方法は、氷河期と間氷期のような自然の気候変動によるさまざまな現象の原因になっている。上のグラフをよく見ると、自然変動サイクルがミランコビッチ・サイクル(地軸の傾きなどによって起きる日射量の変動周期)と相関していることがわかる。0年(おおよそ現在)における二酸化炭素濃度(右上済の黒い点)を見て欲しい。過去80万年にわたる自然変動サイクルから大きく外れている。このグラフは、気候変動にまつわる「あるいは」ではなく「加えて」の側面を例示している。つまり自然変動が起こり、それに「加えて」産業革命以降の化石燃料の燃焼が気候変動を加速している。

重要なのは、たとえ2040年や2080年に今よりも気候が温暖になったときでさえも、やはり冬はあるということだ。ボストンではやはり雪が降るだろう。寒波もやってくるだろう。北極や南極の上空にはまだ極渦があるだろう。私がこれらの事実を書いている今も、気候温暖化の兆候は冬の変化に現れている。Climate Centralの分析によると、1970~2021年の間に、200カ所以上の測候所が冬の寒波の縮小を観測している。寒波は1970年以来平均約6日間減少した。



Scienceに掲載されたある研究は、北極の温暖化の高まりが、成層圏極渦による破壊を引き起こしたことを発見した。それがテキサス州で見られたような極端な寒冷事象につながる可能性があること。気候変動のために暴風雪が激化する可能性を指摘する研究者もいる。多くの人々にとって、これらの現象は直感に反する。大気と地球の関係は複雑なシステムだ。起きていることの多くが私たちのメンタルモデルに当てはまらない。しかし、それは地球温暖化がデマだという意味ではない。

そう、暑い日も地球温暖化の証明にはならない。しかし、熱波の特性の変化を指摘する研究はすべて十分説得力があるので、どうか「誤った等価性」の衝動に駆り立てられないよう注意されたい。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

ForbesBrandVoice

人気記事