科学教育と人類のためになる新たな「水循環図」、人による影響も考慮

人間活動を含めた改訂版水循環図(USGS)

数カ月前、私はForbesに科学教育に関するちょっとした解説記事を書いた。そして、K-12(幼稚園年長から高3)の水循環に関する授業と、そのすべてに欠けている重大なことについて私は考えた。この記事を読める年齢であれば、水循環について実に非現実的な方法で教えられたことを覚えているだろう。そこには人間による影響が考慮されていなかった。米国地質調査所(USGS)は、それを修正するべく、人間を含む新しい水循環図を公開した。

先に私は次のように書いた「昨日の打ち合わせの間に、名前のない熱帯性低気圧がジョージア州を通過したことによる極めて大規模な降雨を目の当たりにした。駐車場に降り注いだ雨は、一部が排水口にあふれ、一部は地面に溜まっていった」。そのとき、20年以上に渡る降雨と洪水に関する私の研究が脳裏をよぎった。舗装された駐車場を流れる雨を窓越しに見ながら、私はほとんどの児童・生徒が学んでいる水循環は、人間のいる環境で実際に起きることを表していないことを実感した。

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豪雨によって溜まった水の中をしぶきを上げて走る自動車。2022年1月3日、英国ブリストル市(Getty Images)

2022年10月、米国地質調査所は新しい水循環図を発表した。同所のプレスリリースにはこう書かれている。「この改訂版は、2000年以来、毎年世界で何十万人もの教育者と生徒が使用してきた図を置き換えるものです【略】この図ではさまざまな場面に人間を登場させることで、水循環が、人間が関与し影響を与えている小さな相互に関連する複数の循環による複雑な相互作用であり、大きな1つの循環ではないことを表現しています」

新しい図(トップ画像)には、都会の水を通さない地面や人間による水の使用(工業、自治体、過程内、放牧、農業)、人工的貯水池などに関連づけるように改善された水の流れが描かれている。これは驚くべき改定であり、私はこれを教育者たちに、水循環の学習にただちに取り入れることを推奨する。

新しい図表のすばらしさに負けじと、私の中の科学者は、この図に何が足りないかを考えた。さらに含めるものの候補を以下に挙げる。

・都会の不浸透面がもたらす水の浸透の減少
・人為エアロゾル、都市化、灌漑、森林伐採などの土地利用による雲と降雨プロセスの変化
・ブラックカーボンエアロゾル(煤)による寒冷圏における解氷の増加
・温室効果ガスによる温暖化を原因とする水循環の加速

なお、上記で足りないといっているのは決して不満ではない。私は新しいUSGSグラフィクスに感動している。これは、人間によるプロセスと水循環の交差部分に関する現代研究を反映したものだ。私はUSGSのディレクターであるデビッド・アップルゲートの意見に賛成する彼は「この改訂版水循環図は地球における水の複雑な旅を、どのように視覚化し、伝えていくかの新しい国際標準であり、次世代の科学者、天然資源管理者、立法者たちが持続可能な水資源管理に取り組むための理解を深めるものです」と述べている。それはまた、私がその昔、科学者として気づいたことも反映している。人間と自然のシステムを結びつけることは不可欠であり、私たちはそうやって教えていく必要がある。

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氷床の解氷に寄与する大気中の煤(ZINA DERETSKY, NATIONAL SCIENCE FOUNDATION)

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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