ビジネス

2020.02.02

気候変動対策は最大の「ビジネスチャンス」、急ぐべき発想の転換

環境活動家グレタ・トゥンベリ

スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリが経済学の学位を取得すべきかどうかについて、スティーブン・ムニューシン米財務長官と妻で女優のルイーズ・リントンの意見は異なるのかもしれない。だが、将来を完璧に予測できるのかと思われるような(市場の)プレーヤーとトゥンベリの意見は、全く同じだとみられる。

市場は気候変動対策を支持している。そう考える以外に、事実上破綻しているのではと疑われる自動車メーカーが世界で最も価値ある企業と評価される理由は見当たらない。企業としてのテスラは完全な失敗に終わるかもしれない。だが、市場は電気自動車(EV)がもたらす力強い未来に期待している。EVはCO2(二酸化炭素)排出量の削減につながるからだ。

気候変動対策は、大きなビジネスになる。おそらく今後数年、あるいは数十年において、最も大規模なビジネスになるだろう。現時点ではEVは、気候変動対策における“シャイニー・オブジェクト(光り輝くもの:成功につながりそうな新しいもの)”に過ぎない。電源構成に占める石炭の割合が高い国や地域では、EVの方が燃費性能の優れたガソリン車より、カーボンフットプリント(CO2などの排出量)が多い場合もあるためだ。それでも市場はテスラをはじめ、気候変動対策につながるビジネスを追い求めている。

テスラだけでなく、先ごろ環境を重視した新しい目標を打ち出して注目を集めた資産運用最大手ブラックロックや、2030 年までのカーボンネガティブ(CO2排出量を実質マイナスにすること)実現を宣言したマイクロソフトなどあらゆる業種の企業が、排出量の削減、カーボンニュートラル(排出量ゼロ)、カーボンネガティブを目指し、それぞれの事業を再設計し始めている。

世界の排出量全体に占める産業部門の割合は21%(発電・熱生産:25%、農業・土地利用:24%)であることから、企業のこうした行動は、極めて重要な意味を持つものだ。

産業部門の活動には、EVや風力タービンに必要な鉄鋼の生産、農作物を育てるために必要な肥料の生産なども含まれる。排出量の問題を解決するために必要なのは、こうしたモノの生産方法を変えることだ。
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編集=木内涼子

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