そして、そのための変革はすでに進められている。これに対して大きな影響力を及ぼしているのは、各国政府の現在と将来の政策であり、消費者の心理だ。
企業が新たに検討する事業は政策に従って進められるようになり、プロジェクトの資金計画においては、環境規制やその今後における強化の可能性が考慮されるようになっている。鉱業でも化学製品製造でも、オペレーターからプラント設計者、エネルギー・素材のプロバイダーまでが、排出量の削減方法の提示を求められるようになっている。
さらに、こうした変化は需要によっても後押しされている。現時点では、まだ肉を食べるのをやめたり、車の利用方法を変えたりする準備ができていない人も多いかもしれない。それでも、消費者は環境に優しい製品を求めている。
ただ、大幅な脱炭素化の実現もパリ協定の目標達成も、必要なのは自由市場における消費者主導の行動だけではない。インフラ構築がイノベーションとともに推進されていくのと同時に、カーボンプライシング(炭素の価格付け)といったものが今後、より大きな役割を果たしていくことになるだろう。
私たちが「気候変動対策は利益につながらない」と思っていられる時期は、とっくに過ぎ去っている。対策を取らないことは、今行動するよりもずっと多額のコスト負担につながる。そして、今行動することは、利益を生み出すことでもある。市場は毎日、私たちにそのことを思い知らせている。