ビジネス

2022.12.19

古着やカバンからオーダーメイド帽子をつくる 大阪から世界へ羽ばたく「ブッチャー」

「BUTCHER」のデザイナー、月田翔子


毎年4回、中崎町のセレクトショップ「WHY KNOT」で実施しているポップアップ企画「フクカラボウシ」は、まさにその考えを体現している。

お客さんが持ち込む服やカバンを材料にして帽子をつくる取り組みで、どういう帽子にするかを一緒に相談しながら、その場で素材をカットしたりパーツを決めたりしてきます。帽子の完成は約1カ月半後。時には「プラダのレザーバッグ」のような、ハサミを入れることを躊躇してしまうようなモノを持ち込む人もいるという。



「良いものや思い入れのあるものだけど、サイズが合わなくなったり、型が古くなってしまったりして身に着けることができない、それでも捨てられないものってあると思うんです。そういうものに、日の目を見せてあげられるようにサポートしていきたいと思っています」

また、中崎町のオーダーメイドスーツ店「シノニム」とのコラボも定期的に行っており、生地の端切れでつくる、スーツとお揃いのキャップやハットを提案している。なかでも「残布6パネルキャップ」は、スーツならではの質感が活かされていて人気のシリーズだ。


残布6パネルキャップ

8月には、明治時代からストローハットを製作している石田製帽(岡山)とのコラボし、50年前のヴィンテージ素材を使用したカンカン帽を製作した。さらに、メーカーの不要在庫を活用した帽子も多数手がけている。


石田製帽とコラボで製作したカンカン帽

長く大事につかってもらえるように


もうひとつのこだわりは、お客さんとの距離の近さ。ブッチャーは常設店舗を持たず、販売は基本的にポップアップでの受注生産のみ。接客には月田自身が立つ。

「もし自分がお客さんだったら、デザイナーが話を聞いてくれて、自分にピッタリの帽子をつくってくれたらすごく嬉しいですし、そうやってつくってもらったものは大事に使うと思うんです」

ブッチャーの強みはそこにある。月田は、競合との市場争奪戦のためスピーディーに大量に生産するのではなく、自分が本当にいいと思ったものを自分のペースでつくりたいという考えだ。

「私はイチから帽子をつくることができるので、かぶる人に合わせたオーダーメイドの帽子を提供できます。そういったモノづくりをしているブランドは少ないので、他と差別化ができています」

ただ、ブランドの認知が増えるにつれて地方在住のお客さんから、ポップアップに行くのは難しいという相談が増えた。そこで一部の帽子はサイズ展開をつくりECサイトで販売している。また、アパレルや小物などを販売するレーベル「ブッチャーアシモトクラブ」も立ち上げ、ロンTやスウェット、エプロンなど様々なアイテムも展開している。
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文=久野照美 取材・編集=田中友梨 撮影=樋口尚徳

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