年末年始に読みたい 内向型が「安全地帯から踏み出せる」1冊ほか

2022年によく読まれた書籍から数冊を紹介する

早いもので今年も終わり、2023年を迎えようとしている。余暇が生まれるタイミングでは本の一冊でも読破してインプットを増やす意識を持っていたいところだ。

そこで本稿では、2022年に発売された書籍の中から数冊を紹介したい。いずれも今年話題になったベストセラーである。

ジル・チャン著「「静かな人」の戦略書」


「静かな人」の戦略書』(ジル・チャン著、2022年6月、ダイヤモンド社刊)は、内向型(静かで控えめ)を自認する人々の背中を力強く押す一冊である。

特徴は、著者であるジル・チャン自身の半生をなぞる形で物語が進む点だ。本書では内向型の人間にとってありがちなシチュエーションや心理が様々に収録されているが、その多くが彼女の経験談に基づいている。

著者の経歴は輝かしい栄光で充ち満ちている。特に目を引くのは「2年間で200以上の講演をこなしてきた」という点だ。このような傑物のどこが内向型なのだろうか、と当初は考えたのだが、読みながら浅はかな自分を反省せざるをえなかった。

本書では様々な息苦しい場面に対して著者がどのように切り抜けたかが詳しく記されている。つまり、著者が重ねてきた経歴こそ、彼女が練り上げた「戦略」の正しさを証明しており、本書に説得力を持たせているのだ。

「はじめに」には以下のような記述がある。

「内向型であっても、外向型であっても、自分の個性を大切にして、安全地帯(コンフォート・ゾーン)から一歩踏み出すこと。他人に貼られたレッテルのせいで、自分の可能性を狭めてはいけないこと。この本でいちばん伝えたいのは、そういうことだ」

本書は世界レベルの著者による戦略書だ。そのため(筆者を含む)一般的な内向型の人間には耳の痛い箴言も数々ある。しっかり受け止めつつ、じっくりと読み進めるのが良いだろう。手に取るのは、年末年始の休暇こそがベストタイミングかもしれない。

稲田豊史著「映画を早送りで観る人たち」


読者の中には、年末年始に消化したい映画やドラマが、年末年始全てを費やしても間に合わないほど積み上がっているという人も珍しくないだろう。

映画を早送りで観る人たち』(稲田豊史著、2022年4月、光文社)は昨今話題となっている「倍速視聴」を駆使してコンテンツを消費する人々に焦点を当て、彼らの動機や目的を書き記している。

各種動画サービスには再生速度を変更する機能が備わっている。筆者は一度も触れたことがなかったが、本書によれば20代の約半数、30代の3割超が倍速機能を使用したことがあるそうだ。いったい何が彼らをそうさせるのか?そこにはコンテンツの供給過多など、現代社会特有の問題が潜んでいるようである。

ところで、本書はあくまでも「倍速視聴をする人」を外側から取材する体裁を取っているが、別の読み方をすることも可能だ。つまり、「倍速視聴入門」として読むのである。

本書には実際に倍速視聴をしている人々のコメントが多数載せられていて、それぞれから倍速視聴の目的や意図、効果的な方法などを学ぶことができる。彼らは何も、「作品全編を倍速で視聴」しているわけではない。そこには彼らなりの、きちんとしたメソッドがあることが、本書を読めば分かるはずだ。
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文=松尾優人 編集=石井節子

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