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地域によっては1月から始まる中学入試本番。最後の大詰めで、本人たち以上に緊張し、ストレスを感じるのは親たちかもしれない。また、何年か先にくるこの季節に備えて、不安になっている「非受験学年生」の保護者も多いだろう。

そんな保護者読者のため、豊富な中学受験指導実績を持つ進学塾に冬休みの過ごし方のアドバイスを聞いた。本番までの数十日の過ごし方を考える上で、また「将来の備え」として、参考にしていただきたい。

答えるのは、早稲田アカデミー公式Webサイトで連載中の「四つ葉cafe 福田貴一ブログ」が保護者たちの間で人気の、早稲田アカデミー教育事業本部副本部長・第六事業部長 兼 錦糸町校校長 福田貴一氏だ。


親の不安。子供に届く時は「元の何倍」にもなっている

もう10年以上前の話になります。

1月31日の夜8時頃、校舎に電話がありました。第一志望校の入試を翌2月1日に控え、その日も夕方まで自習室で勉強していたある女子生徒のお母さんからでした。

「先生、娘が明日、受けたくないって言い出しまして」

電話を切ってしばらくしてから校舎にやってきた生徒とお母さんの2人を面談室に招き入れると、すぐにその生徒の「懺悔」がはじまりました。「計算テストで隣の子の答案を写したことがある」「先生に提出した過去問は実は2回目だったので点数がよくて当たり前なんだ」などと言うのです。そして、「そんな自分が明日受験をしても合格できるとは思えない」と号泣しながら打ち明けてくれたのです。

小学生が受験勉強をするうえでは、そんなことは誰もが経験していることです。ただ、彼女は入試前日の緊張感と不安の中で、そういうネガティブなことばかりが思い出されてきて、とても耐えきれなかったのです。



前日になって彼女がこんなにネガティブになってしまった原因は、実はお母さんにありました。そのお母さんは大変な心配性で、子どもの合格を願うあまり、志望校を変えた方が良いのではないか……とさまざまに悩まれていました。その不安が本人に伝わり、前日になって耐えきれなくなってしまったのだと思います。

私は言葉を尽くして励ましましたが、お母さんもずっと彼女の手を握り、これまでずっとがんばってきた彼女を信じている気持ちを伝えていました。彼女に笑顔が戻り、校舎を後にしたのは22時を過ぎていました。

さて翌朝、志望校の校門前で待っていると、彼女がやってきました。昨日の涙のせいか腫れぼったいまぶた、でもその奥の瞳はキラキラと輝いています。私が「目の前の問題だけに集中して」というひと言をかけて手を差し出すと、彼女はうなずく代わりに、私の手を握り返してくれました。彼女が校門を入っていく後ろ姿を見ながら、私もようやく肩の力が抜けたことを覚えています。

早稲田アカデミー教育事業本部副本部長第六事業部長兼錦糸町校校長、福田貴一氏
早稲田アカデミー教育事業本部・副本部長第六事業部長 兼 錦糸町校校長 福田貴一氏

そして、彼女は見事に合格しました。彼女の不安を取り除き、合格に導いたのは、あの夜、私が話をしている間、その手をずっと握っていたお母さんの手のひらと、そこから伝わった「親の覚悟」だったと思います。自分が一人ではないと感じられた彼女は、不安な気持ちからついに解放されたのです。

保護者の不安はこのように、まっすぐに、いえ、何倍にもなって子どもに伝わります。逆の言い方をすれば、親が覚悟を決め、子どもを信じてあげることが、この時期は一番のサポートだと再確認した体験でした。

構成=石井節子

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