改善の兆しも、成功例の横展開で対策する企業増加
そうした様々な要因が絡む中で、取り締まりが行われてもトラックは一時退避したり、施設の周りを回遊したりするだけで、環境が整わなければ何の解決にもならない。一向に改善に向かわなかったトラックの路上駐車問題だが、ここ最近様子が変わりつつある。
その背景となるのが、トラックドライバー不足が深刻になる数年後を見据え、安定した物流の確保に向けた国の取り組み「ホワイト物流」推進運動だ。生産性の向上や労働環境の改善を目的として、賛同した企業が自主的に取り組みを行うものである。現在1493社(2022年10月31日時点)が登録し、取り組み内容を公開している。
そうした取り組みの中で、手待ち時間の改善に関してはアナログな受付を刷新する「受付システムの導入」が進んでいる。トラックの入場を予約制にするものだ。矢野経済研究所の調べでは、2021年度の導入拠点数は前年度比169%の1100拠点と推計。また試験的に1拠点に導入し運用に成功した企業が、複数拠点に横展開を始めている傾向にあるという。
また荷役作業時間を短縮するため、パレットの活用にも改めて注目が集まっている。箱単位で手荷役せずとも、貨物を台に載せてフォークリフトで積み下ろしができる。2019年の4月には、ゴールデンウィークを前にレンタルパレットの最大手、日本レンタルパレットのパレットが足りなくなるという事態が起こったほど、需要が増している。
他にも、リードタイムの延長や異常気象時における配送の中断など、これまで当たり前に敢行されてきた無理のある輸配送を見直す取り組みが掲げられている。
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敬遠される荷主企業になるリスク
これまで運送会社を下請けとして扱ってきた荷主企業は多いのではないだろうか。本来であれば、協業関係にあるべきはずである。路上駐車問題も放置し続けてきた結果、「荷主を取り締まればいい」という声も大きくなりつつある。
メディアや専門家はここ数年、物流の2024年問題を取り立たせてきていた。2024年問題とは働き方改革関連法案に関する「労働時間の規制」や「時間外労働賃金の引き上げ」が2024年に物流業界に適用されることで生じる諸問題だ。
しかしこれまでは「様子見」の雰囲気もあったことが現実だが、そろそろ動き出す企業が増え始めたようだ。物流における需要と供給のバランスが崩れる手前にある今、「あそこの積み下ろしは待機時間が長い」と運送会社から敬遠されるのは得策ではない。「ドライバーが路上駐車で取り締まりを受けようが関係ない」といった姿勢は通用しなくなってくるだろう。
田中なお◎物流ライター。物流会社で事務職歴14年を経て、2022年にライターとして独立。現場経験から得た情報を土台に、「物流業界の今」の情報を旺盛に発信。企業オウンドメディアや物流ニュースサイトなどで執筆。