米国で専業主夫が台頭、進む育児参加と滞るコロナ離職からの復帰

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家にいて育児をする父親が増え、ジェンダーロールや子育てに対する社会的な意識が大きく変化している。ピュー研究所によると、2021年には210万人の父親が専業主夫になると推定され、1989年から8%増加した。この増加の主な理由は、女性の収入が男性パートナーを上回っていることだ。

大卒・高学歴の女性の社会進出にともない、共働き世帯が急増している。リモートワークやフレキシブルワークの増加により、父親が在宅勤務で育児をしながら、家計に貢献することも一般的になってきた。中には、キャリアを捨てて子育てと家事に専念する人もいる。また、収入を補うために契約社員として働く人もいる。

女性の収入が増えれば増えるほど、女性が唯一の稼ぎ手となる世帯もある。1990年代以降、女性が学士号を取得する割合は年々男性を上回っている。高等教育を受ける女性の数は過去40年間、継続的に増加しており大学への進学率、卒業率ともに男性を上回っている。

育児・介護のコストは劇的に上昇し、両親が外で働くことは経済的に割に合わなくなった。ナニーを雇ったり、子どもを保育園に預けたり、高齢者介護を利用する費用と、オフィスへの往復の通勤費を考えると、片方の親が仕事をやめて家にいることは理に適っている。

父親の育児への参加が進む


この50年間で、父親はより積極的な親になった。2016年、父親が育児に費やす時間は週に約8時間と自己申告している。この時間は、1965年に父親が子どもと過ごした時間のおよそ3倍だ。父親は家事に週約10時間従事したと回答しており、1965年と比較して4時間増加している。2016年の母親は、育児に週平均14時間、家事に週18時間程度を費やしている。

父親が家事をするようになった理由はいくつかある。例えば、女性の仕事や教育での進出が着実に進み、多くの家事をする時間が取れないこと、テック、デジタル、サービス系の仕事が増えるなど経済トレンドの急激な変化が起きたこと、自動化とグローバル化により米国では男性中心の製造業の仕事が少なくなっていることなどが挙げられる。金融危機による大不況で大規模な失業が発生し、米国の父親220万人が専業主夫になった。一度職を失うと、多くの人にとって企業への復帰は困難だった。
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翻訳=上西 雄太

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