無名のイラン女性、その死で「世界で最も影響力ある女性」の1人に

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変化を求める声は、その後も何度もあがってきた。2006年には差別的な法律を変えようと、100万人の署名を集める活動が行われた。また、ジャーナリストで人権活動家のマシー・アリネジャドは8年前から、ヒジャブを着用せずに街なかを歩く女性たちのビデオをSNSに投稿するという「不服従運動」を行っている。

だが、これらはイランの人々を改めて奮い立たせ、イランに世界の注目を集めるには至らなかった。一方、アミニの死は、こうしたことのきっかけとなった──なぜなのだろうか?

誰の近くにもいる「普通の女性」


アリネジャドは、それはアミニがイランの少数民族、(各国で抑圧されている)クルド人だったためだと述べている。

「彼女の葬儀に集まったクルド人たちが、ヒジャブ着用の義務やイスラム共和制に対するデモを大規模な抗議活動に発展させた。それがなければ、イラン全土に広がる反政府デモは起きていなかっただろう」

一方、アミニのもう一つの力は、彼女が多くの人たちが共感できる「普通の女性」だったことだ。イラン人権センターの創設者であるハディ・ガエミは、「彼女は活動家ではなかった」と指摘する。

「彼女の顔、彼女の経験は、イランのどの家族にとっても非常に密接に、具体的に、感じられるものでした」

国際社会からの支援はアンサリーやその他の人々に、イランには今回こそ、真の改革がもたらされるのではないかとの希望を与えている。アンサリーは、「女性たちは、決してあきらめません」と明言している。

「過去数十年、この瞬間、そしてこのおよそ2カ月半を、ただ元に戻るためだけ、このまま家に帰るためだけに犠牲にしてきたのではありません」

イランでは12月4日、一部メディアが「検事総長が道徳警察の廃止を決めた」と報じた。だが、詳細は伝えられておらず、それが事実とはまだ判断できないとされている。政権の力を、過小評価することはできない。過去に行われた抗議活動は、武力によって鎮静化されてきた。

forbes.com 原文

編集=木内涼子

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