奥本:ウェルビーイングにおいて大切なのは「継続」です。データに基づく形でプロダクトやサービスを作り、さらに蓄積したデータをもとにパーソナライズ化する。個々人に合ったレコメンドで行動変容を促すのがウェルビーイングテックが担う役割です。
将来的にはデータをもとに「今日の自分はどれくらいパフォーマンスを発揮できそうか」という指針を、一人ひとりが持てるようになるかもしれません。
データを見ながら自分の働き方を調整し、心と体のバランスを保つために行動することが当たり前になる。それを可能にするのがウェルビーイングテックです。
データビジネスの課題
内山:私自身は先日、メディテーション(瞑想)をサービスとして扱うスタートアップのピッチを聞きました。彼らのサービスは、専用の機械を使って脳波を取り込み、その情報を元に瞑想を誘導するアプリです。
正直なところ、私は瞑想に対して良いイメージがありません。「うまくいっているのかどうか、自分で分からないから」です。
ところが、そのアプリは良い脳波が出た時に特定の音声が流れるので、「これで良いんだ」と実感できました。明確なフィードバックがあるので、「こうなると良い脳波が出るんだ」と学習ができるし、やるたびに集中力のポイントが上がっていくんです。
数値が計測され、それを元にしたフィードバックがあるだけで、こんなにも前向きに取り組めるなんて驚きました。
私自身もデータビジネスを何十年とやってきましたが、問題は「データを集めて分析した後に、その結果をどのように(ユーザーの)次のアクションにつなげればいいか分からない」という状態に陥りやすいことだと思っています。
ウェルビーイングテックに関しても、心拍数や睡眠時間などを計測した後に「これらのデータを使って次にどのような行動をとるか」は、ユーザー自身に委ねられますよね。その点が課題だと感じるのですが、いかがでしょうか?
奥本:おっしゃる通りです。データに基づくアドバイスや提案がされても、受け入れるかどうかは、個人の自由に任されます。しかし、先ほどの内山さんのお話のように、提案や何かしらのフィードバックを受けるだけでも、ご本人のウェルビーイングに対する意識には変化がみられます。
行動の選択はコントロールできなくても、行動変容を促すことはできます。