ビジネス

2022.12.07

市場規模は750兆円 「幸福テック」が人間を幸せにする時代は訪れるか

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内山:難しいとは分かりつつも、もっと積極的に、テクノロジーが人間の幸せを醸成してくれるような時代にはならないですかね。機器を身につけておくだけで脳波を良い状態に誘導するようなテクノロジーはまだないのでしょうか。

奥本:今のところ、テクノロジーからの提案を受けた後の判断は、人間がしないといけません。

しかし、自ら行動を起こすことで気分がポジティブになったり、効率がよくなったり、健康になったりすると、ポジティブな循環が生まれやすくなります。

私は、テクノロジーが担うのは、あくまでも補助的な役割だと捉えています。中心となるのは、健康や幸福に対する本人の意識。テクノロジーや周囲の助けを借りても、最も重要なのは、健康で、なおかつ精神的にも社会的にも満たされたウェルビーイングな状態でいたい「最高バージョンの自分」を実現したいと思う意志です。

ウェルビーイングテックの真髄は、人々がポジティブな行動をするように促すことだと私は考えています。

もちろん、今後もいろんな研究が進み、身につけるだけで健康になるアイテムも登場するかもしれません。

内山:身につけたり、ボタンを一押しするだけで心身が健康になったら良いですよね。

奥本:そうですね(笑)「〇〇するだけ」と言えば、最近はゲームをプレイすることで、メンタルヘルスの問題を解決したり、症状を和らげるようなテクノロジーも生まれています。

私たちのファンドが投資したDeepWellというスタートアップは、メンタルヘルスに効果があるゲームを作っている会社です。今、米国食品医薬品局(FDA)のデジタルヘルスソフトウェア事前認証プログラムを取得しようとしています。取得できれば、彼らのゲームがメンタルヘルスに効果があることの証明になります。

そして、ゲームシステムをモジュール化(部品化)することで、他のゲームデベロッパーもそのシステムを自社のゲームに採用できるようになり、FDAが承認した、メンタルヘルスに効くゲームが市場に出回ることになります。

しかも、ゲームのプロたちが開発をしているので面白くデザインされています。行動の選択をユーザーに委ねるだけでなく、そこにいけば仲間がいると感じられるような、安心感のあるデザインになっていると素敵ですよね。

内山:普及するのが楽しみですね。今回も貴重なお話の数々をありがとうございました。
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取材=内山幸樹 構成=倉内夏海 編集=露原直人

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