筆者もまさにそのひとり。私事で恐縮だが、小学校4年になる娘は「宿題やったの?」「勉強しなさい」と言っても、まったく聞く耳を持たない。「言いすぎるのもよくないから、子どもの自主性に任せてみよう」と心を鬼にして黙っていたら……休み明けのテストでおそろしい点数を取ってきた。なのに、まったく動じる気配はない。「〇〇ちゃんは何点だったみたいよ。すごいね~」と完全に他人事だ。
「この状況、いったいどうすりゃいいの?」と思い悩んでいたところ、進学塾VAMOS代表の富永祐輔氏にお話しをうかがう機会をいただいた。
富永氏は、入塾テストを行わず先着順に子どもを受け入れ、毎年多くの生徒を難関校に合格させ、「成績が伸びる塾」として輝かしい実績を積み重ねている。2022年8月に『ひとりっ子の学力の伸ばし方』を上梓した富永氏なら、ひとりっ子をやる気にさせる方法をきっと教えてくれるはずだ。
ひとりっ子を育てるうえでもっとも大事なのは、まず親が「あきらめの境地」に早く立つことです。日々現場で強く感じることですが、ひとりっ子の親は全般的に理想が高いんですよね。それをいい意味であきらめたほうがいいです。「子どもは親の思い通りにならない」ということにいち早く気づいたほうがうまくいきます。でも、なかなかそれに気づけないことが多い。
日本特有の傾向ですが、なぜかひとりっ子に対して罪悪感があるように思います。ひとりっ子は別に悪いことでも何でもないのに、「ひとりっ子にさせちゃった」という思いがどこかにあって、その罪悪感を払拭しようと子どもに120%の熱意を向けてしまうのです。
それに追い打ちをかけるかのように本や雑誌、塾などが煽るから、親御さんもますます「勉強させなきゃ!」と頑張ってしまう。でも、本当は親が現実を知り、早くあきらめればあきらめるほど楽になって、結果、うまくいきます。子どもに関して、親御さんが真面目に考えすぎているところが苦しみのもとなのです。冒頭の話で言えば、そもそも小4の休み明けなんて勉強したくないし、やる気ある子なんてまずいません(笑)
子どもの「やりたくない」にはレベルを下げる、そして──
子どもが「やりたくない」と感じるのは勉強や受験、スポーツをやるうえで必ず一度は通る道。特に、小学校低学年のうちは日常茶飯事です。
「やりたくない」には2パターンあります。ひとつは「できないからやりたくない」。勉強が難しくて解けないからやりたくない。スポーツがうまくできないから参加したくない。塾でついていけないからやりたくない。
進学塾VAMOS代表 富永祐輔氏
この場合は、レベルを下げたことをやらせればいい。それはつまり、保護者の方がレベルを下げる努力をすればいいだけです。でも、ひとりっ子の親はなかなかレベルを下げられないことが多いです。なぜなら、理想が高いから。でも、この場合の「やりたくない」はレベルを落とすことでほぼ解決します。
もうひとつの「やりたくない」は、「気分が乗らないからやりたくない」です。この場合は、子どもと話し合って、「やりたくないことはやらなくていい。でも、やりたい勉強だけはきちんと続ける」という契約をするのです。やりたいことなら気分が乗るから、やれるはずです。