せりか:衛星データが保険金の支払いに役立つんですか?
伊藤さん:はい。水災害や地震などの災害発生時には、通常現地の保険金サービス部で保険金支払いをします。それでも人数が足りない程度の大きな災害が起きた場合、お客さまにいち早く保険金をお届けするために災害対策本部が設置され、当社の全国の社員がその地域に駆けつけて保険金の支払いを支援します。
水災害の保険金を計算するためには浸水高の測定が必要になるので、水災害発生時にはスタッフがお客様のお宅に伺って浸水高を確認するか、もしくはお客様に被害箇所の写真を撮って送っていただく必要があります。浸水が発生しているエリアのお客様から保険金請求が来ていない場合はこちらからお電話をしています。私も何度か行ったことがあるのですが、2週間くらいずっとオフィスに缶詰状態で対応しました。
衛星データの解析結果から被害状況を把握して災害対策本部を設置するのに活用できないかと、まさにSynspective社と対話しながらソリューションを作り上げているところです。これまでは気象データや過去の災害時の経験などを参考にしていましたが、気候変動の影響で災害の規模が拡大していることから、発災後の被害状況データの重要性が増しています。衛星データが加わることで、スタッフ、ホテル、タクシーを手配すべき地域や数を効率的に計画できるようになり、訪問までにかかる時間を削減でき、より早く保険金をお支払いできるようになります。
衛星が画像を撮影してから地上でダウンリンクするまでのリードタイムが短縮されれば、衛星データはより便利になると思います。ここは衛星間光通信を使ったネットワークシステムの開発に取り組むワープスペースさんの事業の見せ所ですよね。頑張っていただきたいです。
せりか:宇宙保険で衛星事業者を応援しながら、衛星データを実際に活用して、お客さまの保険金支払いのスピードアップにも活かそうとされているんですね。
伊藤さん:そうですね。宇宙開発企業ではない外の目線から、衛星データのユースケース創出に繋がるような提案をしたり、実際に衛星データを使ってみて感じた課題について意見交換をさせていただいたりすることは、宇宙産業の成長に繋がると考えています。こういう面でのご支援も、宇宙保険事業と並行して取り組んでいきたいです。
せりか:伊藤さん、ありがとうございました!
せりか宇宙飛行士との対談シリーズ第13弾のゲストは、損保ジャパンで宇宙保険の営業を担当されている伊藤穂乃香さんでした。次回は、アストロスケールの伊藤美樹さんをお迎えして、宇宙の持続可能性について議論します。お楽しみに。