こうした取り組みの背景には、毎日の通勤時間を削減して人々の満足度を上げ、ストレスを減らし、願わくば生産性を上げようとういう考えがあった。
コロナ禍により遠隔勤務の価値が明らかになり、こうした論理はそれほど強固なものではないかもしれないと思いたくなるものだ。しかし最近の欧州経営大学院(INSEAD)の調査からは、リーダーが勤務場所と同じ地域に住む企業はその恩恵を受けることが示唆されている。
近所の最高経営責任者(CEO)
「この論文では、近所のCEO、つまり地元のコミュニティーと親しみがあるCEOに焦点を当て、こうしたCEOがどのように職場の状況を形作るかを論じる」と研究者らは説明した。
ほぼ全ての組織が文化改善の取り組みを進めている。役員らの大半は、企業文化を改善すれば会社の業績も上がると確信しているのだ。CEOが組織の文化を形成する上で重要な役割を果たすことはおそらく言うまでもないだろうが、CEOの自宅の住所が大きな役割を果たすと考える人は少ないだろう。
地元のコミュニティー
研究者らはいわゆる「近所のCEO」を地元のコミュニティーと強固な関係を持つ人と定義し、オフィスの近くに住むことが仕事環境に限らず、パフォーマンスや利益性に与える影響についても分析した。
研究者らが焦点を当てたのはデンマークだ。労働環境測定のために、デンマーク企業7万社以上を網羅する2008年~15年のデンマーク労働環境局(WEA)のデータが分析された。
研究者らはそれから、労働者が職場についてどう感じたかや、リーダーがさまざまな職場の問題にどう対処したかを分析する複数の調査を活用し、最後には各企業の本社の住所とCEOの住所を集めて各企業の「ご近所レベル」を計算した。
また最後の評価基準の補強としては、数万人のCEOを対象とした追加調査が活用された。これは、住んでいる地区に対するCEOの親しみ度を測り、それが会社の経営にどう影響するかを理解するためのものだ。
その結果からは、経営者らが職場から5キロメートル以内の場所に住んでいる企業はより良い勤務先とされたことから、企業の成功において場所が大きな役割を果たすことが示唆された。
これは調査結果からも再確認され、CEOの居住場所と会社の文化の間の相関関係が明確に示された。経営者らがオフィスに近いところに住んでいる会社の職場はより公平かつインクルーシブで、職場での決断に関してより多くの情報が従業員に提供されていた。