ビジネス

2022.11.25

通わない歯科矯正に希望者3万人 「怪しさ」を地道に払拭

Oh my teeth CEO 西野誠(撮影=藤井さおり)

「通わないマウスピース歯科矯正」のOh my teeth(オーマイティース)が成長している。

これまでに約1万人がサービスを利用し、体験希望者は3万人(10月31日時点)を突破。歯型のスキャンやユーザーからのオンライン相談に対応するOh my teeth導入クリニックは、これまで表参道と大阪心斎橋だけだったが、6月に有楽町、7月に池袋、10月に新宿へと拡大した。

6月には、通院不要の、自宅でマウスピース矯正ができる仕組みで特許を取得。本田圭佑氏もOh my teethを利用し「歯並びがきれいになったら出資する」と約束をしているという。

実はサービスを開始した2019年当時は、世の中に多数出回るマウスピース矯正に対する業界からの厳しい意見もあった。日本矯正歯科学会も、同年に注意喚起文を公表していた。

ではOh my teethはどのように、市場からの信頼を醸成してきたのか。


「誤解が多かった」


Oh my teethでは、まず提携する歯科医院で3Dスキャンによる歯型の抽出をし、続いて口内のレントゲンを撮影する。利用者はその後、LINEに届いた矯正イメージを承認するとオーダーメードのマウスピースキットが直送される。

マウスピースキット
提供=Oh my teeth

前歯(上下合わせ12本)の矯正に特化しており、治療期間は約3カ月。料金は、一般的なワイヤーを使った治療の相場が約100万円なのに対し、Oh my teethは33万円と割安だ。初診時にマウスピース治療が難しい場合は、提携医院に紹介する仕組みもある。

消費者からは「通わずできる」ことやサポート体制が評価されたが、業界からの反応は違ったと、同社のCEO西野誠(にしの・まこと)は振り返る。

「誤解が多かったです。『歯医者に行かず、検査項目が不十分な矯正』『(前歯矯正に特化しているが)奥歯から直さないと矯正じゃない』といった声が歯科医からありました」

そこで西野は、信頼を勝ち取るために情報発信を強化した。

自社の「歯科矯正ブログ」で、歯科医師の監修のもと294の記事を公開してきた。内容はマウスピース矯正や部分矯正のメリットやデメリット、歯科の選び方など多岐にわたる。Oh my teeth を使った100を超える症例のビフォーアフターも掲載し、本当に治るのか、という「怪しさ」払拭に努めた。

また、創業初期から、治療可否の判断方法や医療チーム体制など、矯正への姿勢を明文化した「メディカルポリシー」を公表している。

この取り組みは功を奏す。日本歯科新聞が発行する「アポロニア21」の2022年10月号で、8ページにわたる特集が組まれたのだ。

「雑誌の編集長も、マウスピース矯正には懐疑的だったそうです。ただ、症例の公開やメディカルポリシーをみて、取材を決めてくれました。広告記事ではないですよ(笑)。正しい治療を行っていることをきちんと伝えれば、業界からの理解も進むんだと自信を得ました」
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文=露原直人 撮影=藤井さおり

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