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2022.11.25 14:00

野生動物が拷問を受ける動画が数百億回もソーシャルメディア上で再生されている


ソーシャルメディア大手の関心が低く、野生動物をペットとして所有することの有害な心理的影響についての教育が不足しているために、こうした動画は何十億回も共有され、ソーシャルメディア企業のアルゴリズムがその流通をさらに促進している。視聴者はこうしたコンテンツを「かわいい」と思いがちだが、こうした動画が他の視聴者に野生動物を(合法・非合法にかかわらず)購入し、ペットとして飼うことを促していることが調査で明らかになっている。

特に、SMACCの報告書では、ペットとしてのスローロリスの需要増加にソーシャルメディアが一役買っていることが判明している。報告書には国際動物救助協会(International Animal Rescue)のアラン・ナイト会長の言葉として「他の野生動物と同様、これらの絶滅の危機に瀕した霊長類は、家庭のペットとしての生活にはまったく適さないのです」との引用がなされている。「ロリスは売られる前に、爪切りやワイヤーカッターで歯を切り取られて、無防備にさせられるという苦痛を受けるのです」

研究者でありSMACCの主任コーディネーターであるニコラ・オブライエンは、意図的な身体的虐待や拷問はすぐにわかるが、野生動物をからかったり、怖がらせたり、人間のように着飾らせたりといった心理的虐待は、もっと微妙で気づかないことが多いのだという。たとえば、Facebookにアップされたある動画では、誰かがマカクザルをバルコニーにぶら下げている様子が映されていた。また他の動画では、ペットのマカクザルの子どもが何度も海に投げ込まれ、泳いで人間のもとに戻ってくる様子も描かれている。Facebookで2600万回再生されている人気動画では、飼い主に脅されて怖くて飛び跳ねるマカクザルの姿が映し出されている。

「一見ペットのトラにミルクを与えている愛情深い飼い主のように見えても、相手にしているのは、実はこれまでも、これからも苦しむ絶滅危惧種なのです」とオブライエンはいう。「これらの動物を入手することは、危険でしばしば違法な世界的取引を支え、動物福祉と絶滅危惧種の保護を脅かしているのです」

報告書によれば、野生動物は、ソーシャルメディアプラットフォームや、Snapchat(スナップチャット)やWhatsApp(ワッツアップ)などのエンド・ツー・エンドの暗号化通信プラットフォームで、しばしば広告され売買されているとのことだ。密売業者は、Facebookなどのソーシャルメディア上のプライベートグループを使って、野生動物を違法に販売している。財産・環境研究センター(Property and Environment Research Center)のキャサリン・セムサー研究員は「世界第4位の違法経済である野生動物不正売買は、ソーシャルメディアなどのデジタル空間へ早くから軸足を移していました」と語る。法執行機関の厳しい取り締まりやソーシャルメディアのガイドライン違反にもかかわらず、野生動物の不正売買はソーシャルメディアの光の当たらない片隅で行われ続けていると彼女はいう。

「これまでのところ、ソーシャルメディア企業と法執行機関の間に、野生動物の不正売買問題に取り組むための十分な関係が構築されているとは思えません」とセムサーはいう。
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翻訳=酒匂寛

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