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2022.11.29 09:30

D&Iの制度作り 不公平感の払拭には経験のシェアが効く

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D&I推進のために制度を作りたいが、「制度が公平性を欠く」「現場から吸い上げた声をどう反映していいか分からない」などと頭を抱える担当者は少なくない。そう、D&Iの制度作りには、数多のハードルが存在する。

前回はD&I推進に欠かせない風土とマインドの醸成方法に触れたが、今回はD&Iの制度構築における難所とそれを乗り越える方法について、これまで複数社でD&I推進を支援してきた経験をもとに書いていきたい。

D&Iは何のため? 目的意識を揃えるワークショップ


D&Iの制度作りにおいて、最初に担当者が乗り越えなければならないハードルが、目的の明確化だ。そもそもD&Iの目的とは多様な人材活用により業績を向上させることだが、日本では依然、それを理解できていない企業が多い。

D&Iには法令遵守、リスク管理などの観点から行なう「守り」と、グローバル化など不確実な経営環境でイノベーションを生み出し、競争力を強化していくための「攻め」、大きく分けて2つがある。

後者の実現により目的を達成できるが、日本ではまだ「守り」に終始する企業が大半を占める。「女性を○人採用する」などと数合わせのような指標を掲げているのは、その代表例だ。

攻めのD&Iのために私が活用してきた方法の一つが、ワークショップだ。役員を含めた全社員を対象に、「業績を伸ばすために必要なD&I施策」を考えるワークショップを開催。1チーム5〜6名の構成で、課題の洗い出しから解決策まで半日をかけて意見を出し合い、まとめていった。

参加者はそれによってD&Iの目的を認識するとともに、自身または周囲が漠然と自社の企業価値向上に必要だと考えていたことを明確化でき、打ち手を見出せる。

ある企業ではこの取り組みがきっかけになり、外国籍の社員から出た「東日本大震災の時、母国語での社内アナウンスやマニュアルの必要性を強く感じた」という意見をもとに、多言語で社内のマニュアルを作るルールが危機管理制度に組み込まれた。他にも管理職候補が連携し、事業を創るジュニアボード制度など、数々のD&I推進制度が誕生した。


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「自分が当事者だったら」を経験


D&Iの制度作りで担当者を悩ませるのが、公平性確保の問題だ。D&Iではマイノリティの声を拾い上げることが重要だが、時としてそれが他の社員の不利益につながる。

例えば女性の役員登用は、経営やコンプライアンスの観点からもメリットは大きい。特に経営の方向性を決める経営会議や取締役会議では、多様な人材構成が重要になる。しかしその分、男性登用の割合は減ることになる。また、妊娠や子育て中の社員に配慮し、業務の負荷を減らしたりすると、その分を別の社員が肩代わりすることになる。

そうした不公平感をどう乗り越えるか。私が大切にしてきたのは、マイノリティの経験を共有することだ。
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文=吉本明加 編集=鈴木奈央

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