地球上の資源は有限だというのは間違った認識だ。資源をより多くの人に分ければ、1人当たりの資源は少なくなる。しかし地球には10万年前に私たちの祖先が洞窟に住み、人口が100万人以下だった頃と同じ原子がある。同じ資源に頼りながら、なぜ80億人が100万人よりも豊かに暮らせているのだろうか。
このほど出版されたマリアン・トゥーピーとゲイル・プーリーの共著本『Superabundance』はこのテーマを深く掘り下げている。著者らは人口増加が生活水準を向上させるという強力な統計上の証拠を示し、その理由について人間の創造性とイノベーションを強調しながら説明している。
長期的な成長を研究する経済学者は通常、生産関数から始める。生産関数は、総生産量が雇用される労働の量と物理的資本(道具、機械など)の量に依存すると仮定している。このモデルは一般に教育などによる労働力の質の向上や、物的資本の老朽化を考慮して調整される。
初期の統計学的研究により、労働と資本のモデルが何かを見逃していることが明らかになった。 経済は労働と資本の増加で説明できるよりもはるかに速く成長していた。私たちはこの余分な成長を技術改善と呼んでいる。これはコンピュータなどのハイテクだけでなく、マクドナルドがハンバーガーをより効率的に作る方法を考え出したときのような手順も含まれる。
しかし、技術的な変化は簡単に起こるものではない。企業には従業員なら誰でも効率改善の提案をすることができる意見箱があるかもしれないが、大きな成果はほんの一握りの人たちから生まれる。このようなイノベーターは頭脳と粘り強さを兼ね備えていて、適切な環境であれば目覚ましい成果を上げる。こうした人たちは、与えられた入力量からどれだけの出力量を得られるかを改善する能力に関しては100万人に1人の存在だ。
もし、進歩に100万人に1人の人材の才能が必要なら、母数が多ければ多いほど100万人に1人の人材は増え、より多くの進歩を遂げることになる。
そして、そうした逸材によるイノベーションから得られる利益のほとんどは、イノベーターらではなく消費者にもたらされる。ノーベル賞受賞者の経済学者ウィリアム・ノードハウスはその割合を試算した。「イノベーションがもたらす社会的余剰のうち、イノベーターが獲得できるのは2.2%程度と推定される」とのことで、残りの97.8%は私たちの手に渡る。
天才的な進歩の理論が間違っていて、技術の進歩は平凡な人々から生まれるとしても、平凡な人が多ければ多いほど進歩するということになる。
マルサス主義者の誤りは、物理的な資源は有限だが、人間がそれを使う方法は無限に近いということを認識していないことだ。より多くの人がイノベーションに取り組めば、より多くの良質な食料をより低コストで、そしてこれまでよりも環境を損なうことなく栽培するより多くの方法が見つかるはずだ。
生まれた80億人目の赤ちゃんを祝福し、その子が人類を助ける天才の1人であることを祈ろう。
(forbs.com 原文)