ビジネス

2022.11.25

2040年の新しい医療インフラへ、二人三脚で乗り越えた経済合理性の壁 ファストドクター菊池亮、水野敬志

ファストドクター 水野敬志(左)、菊池 亮(右)


2年間で売上高は約10倍に成長


ビジネスモデルもユニークだ。患者からの連絡がサービス提供の起点にはなるが、患者側に利用料は発生しない。マネタイズの手段は3つ。最も大きな収入源は、ファストドクターのプラットフォームに参加している提携医療機関からの報酬だ。

往診などの医療行為は医療機関でないと行えない。そのため、ファストドクターに登録している医師たちは、活動する日は同社と契約している医療機関と雇用契約を結んだうえで診察を行う。

例えば、ファストドクター経由で往診に至った場合、患者は担当してくれた医師の所属医療機関に医療行為の対価を支払う。一方で医療機関側は、受診相談の受付からトリアージ、ドライバーの手配、診察料の受け取り、保険請求業務など、医療行為以外の業務をすべてファストドクターにアウトソースしているかたちになり、その対価をプラットフォーム利用料として支払う。

ふたつめの収入源は、在宅療養支援診療所の基準を満たすクリニックなどのバックアップサービス。水野は次のように説明する。「在宅療養支援診療所の要件は、24時間365日、必要に応じて訪問診療に対応できることです。これは開業医の先生たちにとってかなりの負担で、ファストドクターの往診のリソースで代診するサービスも提供しています」

そして3つめが、コロナ禍での対応を通して関係を構築してきた地方自治体からの報酬だ。すでに37自治体と協定を結び、ビジネスの基盤を拡大している。

コロナ禍以降の2年間で売上高は約10倍に成長し、前年度まで赤字だったものの22年7月期の営業利益は大幅黒字に転じた。「効果的で質の高い医療を提供するために生産性を上げてきたことで、今期は利益がグッと伸びた」というのが菊池の実感だ。

(続きはフォーブス ジャパン2023年1月号でお読みいただけます)




菊池 亮◎帝京大学医学部医学科卒。救急医、整形外科医。2016年にファストドクターを設立。
水野敬志◎京都大学大学院農学研究科修了。戦略コンサルティングファーム、楽天などを経て2017年にファストドクター参画。

文=本多和幸 写真=ヤン・ブース スタイリング=堀口和貢 ヘア=KOTARO(センス オブ ヒューモア) メイク=SADA ITO (センス オブ ヒューモア)

この記事は 「Forbes JAPAN No.101 2023年1月号(2022/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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