韓国にも「386世代」という高度成長期の初期に生まれ、軍部独裁政権に歯向かったが、就職してからはまじめに働き、労組が度々賃上げ紛争を起こしてくれるおかげで、年々高賃金をもらい、そのお金で不動産を買い、その不動産が値上がりすることにより、どんどん富を増やした世代がある。
ちなみに、「386世代」とは、インテルのi386プロセッサ搭載のパソコンを「386コンピュータ」と呼んだことに由来して、60年代に生まれ、80年代に大学生を経験し、30代になった人たちという意味である。
そして、この世代の人たちを韓国のいまの若者たちは、「既成世代」または「既得権」といい、目の敵にしている。
彼らが高度成長の甘い蜜をむさぼりながら、自分たちには就職難という辛い現実を突きつけていると見ているからだ。日本でも、団塊の世代の下の世代は、バブルがはじけ就職氷河期で正規の雇用に就けず、ニートになった世代がいるようにである。
元検察官の尹大統領の迅速な表明
話を戻すと、デモ行進の後ろについて歩きながら、誰かがつくった「朴槿恵退陣せよ」フレーズを叫んでいると、近くにいた人たちとの連帯感が生まれ、本当に朴槿恵は退陣すべきだと思えてくるのだった。
いまになって冷静に考えると、いったいロウソクは誰が準備し、誰が音楽や踊りの舞台装置を提供していたのか、かなり群衆の心理をよく把握したプロパガンダが展開されていたということに気づくのだが、扇動されている間は気が付かないものだ。
セウォル号で犠牲になった高校生の親たちは、まるで国に功をたてた人のように振舞った。ソウルのど真ん中に自分たちの子どもの位牌を並べたテントを大きく張り、「セウォル号を忘れるな」と書かれた横断幕を掲げ、惨事を象徴する黄色のリボンも配布した。
もちろん、自分の子どもが急に亡くなったことで気が動転していたり、哀しかったり、誰かのせいにしたかったりする気持ちはわかる。だから、沈没船を運営した会社や、いち早く適切な行動をしてくれなかった警察や政府に不満を持つことも理解できる。
だが、それが大統領を弾劾することにつながったのは、やはり何らかの政治的な思惑がそこに絡んでいたと思えてならない。ちょうどそのときは、朴槿恵大統領が米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を中国の意に反して配備したことで、中国が「限韓令(韓流禁止令)」を発して貿易が急速に冷え込み、さらにそれが韓国に跳ね返り不景気を招来していた。
そうした背景から、朴槿恵政権つまり米国や日本寄りの保守系が失権し、中国や北朝鮮寄りの「共に民主党」の文在寅大統領が誕生した。
すると文政権は、真っ先に慰安婦問題など、日本との関係を改善するために合意された「和解・癒し財団」を解体した。それにより日本との関係は最悪な局面を迎えた。反面、北朝鮮との対話をするために文政権は奔走した。
味方をまとめるためには、外に敵をつくることが重要だが、文在寅前大統領は国を二分し、自分に反対する勢力を徹底して排除した。その代わり、味方からは絶大な人気を誇った。特に、ジェンダー問題に長けていて、女性の味方というポジションを取った。「女性の敵は女性」とはよくいわれるが、そういう意味でお嬢様育ちの朴槿恵大統領は女性の敵だったかもしれない。