純粋な石英の色は一般的には白またはグレイだが、珪岩はさまざまな濃度のピンク色また赤色を呈する。これはありふれた酸化鉄鉱物であるヘマタイト(赤鉄鉱)がさまざまな割合で混じっているためだ。その他の色、黄色、緑色、青色、オレンジ色などは別の鉱物による。
墓地の地質学が扱うのは墓石だけではない。地下にある岩石の種類は、死体の分解において重要な役割を果たす。遺体を格納する箱型の容器の名称であるsarcophagus(サルコファガス、石棺)が「肉が食べられる場所」という意味のギリシャ語から来ているというのは興味深い。古代、サルコファガスは特定の種類の砂岩で作られていた。気密封止され、死体の分泌液と反応することで、砂岩が腐食環境を形成し、肉体の分解を加速させた。
墓の中で死体が分解する速さは温度、湿度、空気循環、地下水位、土壌の酸性度、死体の化学組成などによって変わる。地中に埋められた軟組織の分解には15~20年かかることがある。全体の骨格や単一の骨は数世紀かそれ以上残ることもある。
地質状況が腐敗を遅くしたり、停止させることさえある。パリにある墓地では、粘土層が地下に不透水層をつくっている。水を多く含んだ土壌が分解微生物に対する障壁になるため、当地の墓地で数世紀前の濡れたミイラが発見されることは珍しくない。おそらくこれを見たことが、幽霊の出る墓地の神話を信じるきっかけになったのだろう。乾燥した環境の砂質土では、水分の不足が微生物活動の阻害因子となる。乾燥した砂漠の砂の中でミイラ化の過程を発見した古代エジプト人たちは、亡くなった親戚たちの人工的ミイラ化を取り入れた宗教を発展させたのかもしれない。
現代の墓地の場所もまた、地質学的要因を考慮して選ばれている。死体をできるだけ早く分解するために、選ばれた地域の地下は空気と水に対して部分的に透過性であるべきだ。地下水面は岩盤内の十分深い位置にあるべきだ。土層は十分な深さ、少なくとも6.5フィート(約2メートル)が必要で、死体が分解される際に発生する汚染物のための一種のフィルターの役目を果たす。
そういうわけで、今度墓地を訪れる時は「人はもともと土から作られたから、まもなく土に還る」という言葉のどおり、いつの日かあなたが、埋葬された場所で地質学の歴史の一部になることを思い出して欲しい。
【訳注】米国では従来土葬が主流であったが、米国葬儀社協会の報告によると2015年前後を境に火葬の方が多くなっている。
(forbes.com 原文)