「墓石と墓地」の地質学的研究

墓地に並ぶ墓石(Getty Images)

墓地は最愛の人を思い出すための平穏な場所を提供しているだけではない。そこは、地域の歴史と芸術を学ぶための博物館であり、都市部の昆虫や地衣類、植物、野生生物などのために安息地も提供している。そして墓地は、地質学を深く考えるためのすばらしい場所でもある。

人間の一生はほとんどの岩石と比べると短い。地球最古の石は40億年以上前の「冥王代(Hadean)」に形成された。ギリシャの死の神であり地下世界の王だったHades(ハデス)にちなんで名づけられた地球の初期の時代だ。

墓石は、斑糲岩(はんれいがん)や花崗岩(かこうがん)のような深成岩、粘板岩や大理石のような変成岩、あるいは稀に砂岩や石灰岩のような堆積岩で作られる。選択基準は美的価値と実用性による。

花崗岩にはさまざまな色があり、雲母の黒い点が散りばめられている。工作や彫刻が容易で、興味深い色の帯や層を見せている。

石は永遠に残り、故人の名前と思い出を持っているように思える。しかし、岩石といえども老化して最後には分解して土になる。

そんな岩石を構成する鉱物は、地球内部の高温と高圧によって結晶化される。大気中ではそれらの鉱物は安定ではなく、物理的、化学的な変化の影響を非常に受けやすい。たとえば石灰岩、苦灰岩(くかいがん、ドロストーン)、大理石などの炭酸塩岩を構成する方解石ドロマイトは、水に溶けるため侵食が早い。

炭酸塩鉱物と斜長石も空気汚染に弱い。自動車の排ガスや工場排出物の硫黄成分や窒素が風化と崩壊を早める。

斜長石、雲母などの鉱物は、花崗岩のような深成岩や片麻岩、片岩などの変成岩を構成し、水と酸素に反応し、崩壊して粘土鉱物になりやすい。

深成岩と変成岩は、物理特性の異なるさまざまな鉱物の比較的大きい結晶から成り、それぞれの鉱物が熱によって異なる比率で膨張する。太陽が墓石を加熱すると、鉱物粒子が膨張し、緊張が蓄積されていく。夜間に気温が下がると、鉱物粒子は再び収縮する。最終的に、熱による膨張と収縮は最も大きい墓石さえも破壊してしまう。

長持ちする墓石は単鉱岩で作るべきだ。この石は一種類の鉱物だけから成るため、すべての鉱物粒子が同じ速度で膨張・収縮し、物理的風化作用の影響を受けにくい。珪岩は、元は純粋な石英からなる砂岩だった変成岩であり、適した材料だ。石英は科学的に極めて安定な鉱物であり熱膨張率が非常に小さい。
次ページ > 石棺で使われる鉱物

翻訳=高橋信夫

ForbesBrandVoice

人気記事