キャリア・教育

2022.10.27 13:00

意外にも苛烈なハワイの教育事情 待つのは名門私立校をめぐるお受験戦争


ハワイでは通っていることを自慢できる名門校が2つある。1つは、バラク・オバマ元大統領が卒業した(オバマ元大統領は卒業後ハーバード大学に進学)ことで有名な「プナホウスクール」。古くは福澤諭吉が慶應義塾を創立する際に学校づくりを学ぶために視察に訪れたという、歴史あるプライベートスクール(私立学校)である。


プナホウスクール(撮影:岩瀬英介)

創立は1841年。東京ドーム7つ分という広大な敷地と、大学かと思うくらいのアカデミックな雰囲気、そして立派な施設が特徴で、誰もが「親子で見学に行くと親のほうがその雰囲気に魅了されて子どもを通わせたくなる」という。敷地には34の建物があり、幼稚園から高校までの一貫教育。慶應が小学校から大学までだから、下に1つ分スライドした感じだ。

約3700人の生徒が通い、この規模は全米でも有数だ。卒業後の大学進学率はほぼ100%で、ハーバードやイエールをはじめとするアイビーリーグの大学や、スタンフォードなど西海岸の名門大学へと進学する卒業生の数はハワイ州随一だ。スポーツも盛んで、2021年の東京五輪のサーフィン種目で金メダルを獲ったカリッサ・ムーア選手はプナホウスクールの出身。彼女が例外ということではなく、過去に10人以上の五輪メダリストを輩出している。

そのライバル校とも言える名門校のもう1つが、「イオラニスクール」。プナホウはハワイ州立大学に近いのに対して、イオラニはワイキキからほど近い運河沿いにある。こちらの創立は1863年で、ハワイではプナホウに次ぐ歴史を誇る。


イオラニスクール(撮影:岩瀬英介)

同じく幼稚園から高校までの一貫教育校で、少人数制クラスで勉強の指導をしっかりしてくれるという評判があり、よく「プナホウは放任だけど、イオラニは面倒見がいい」と言われることがある。米国本土の名門大学を見学するツアーも頻繁に実施していて、なんとなくこちらのほうが進学校という雰囲気もある。

ハワイのプライベートスクールでは珍しく、2018年からボーディング(寄宿舎)をスタートさせて、ハワイ州外からの人間でも通いやすくなった。最近は日本でも入学説明会を開くなど、積極的に州外からの学生を受け入れている。大きなスタジアム施設もあり、スポーツも盛ん。その点でもプナホウに負けていない。

またイオラニスクールの特徴は、理数系に強い生徒が多いこと。数学の力を競う「マスリーグ」のハワイ大会では、1993年以来、ずっとイオラニが優勝している。またサイエンスオリンピックでは全米優勝したこともある。いわゆるSTEAM教育にも力を入れており、その拠点として最新設備のサリバンセンターを2012年に設立している。
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文・写真=岩瀬英介

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