コロナ禍では、在宅勤務が普通のことになった。人々は経済が再開する中、より良いワークライフバランスを提供してくれる遠隔勤務の継続を求め、マイクロマネジャーの上司が部下のオフィス復帰を求めると、労働者は遠隔勤務がうまく行っていると指摘してきた。
ただ、完璧なものは存在しない。遠隔勤務のデメリットの一つは、遠隔勤務者が管理職から「二流市民」として見られてしまう可能性だ。遠隔勤務者は、重要な会議や会話に参加できない可能性がある。
米国は再び不安定な状況に置かれている。史上最高水準のインフレが生じ、連邦準備銀行(FRB)のジェローム・パウエル総裁は、インフレに勝つためには経済を沈静化させる必要があると述べた。
FRBの積極的なプログラムは、企業と米国の家庭の両方に影響を与えるだろう。パウエルは、自身の政策が「痛み」を生み、企業によるコスト削減と労働者の解雇につながることを認めている。大企業の経営陣は、金を節約し支出を抑制する方法を考える可能性が高い。
ホワイトカラーの仕事が他国に移動
銀行や金融、テック、ネット基盤の会社など多くのサービス系企業では、人材が最も高いコストだ。高い教育を受け報酬も高いホワイトカラーの専門職は遠隔で勤務し、工場や倉庫、発送センター、建築現場やレストランでの勤務が必要とされるブルーカラーの労働者よりはるかに多くの額を稼ぐ傾向がある。
経済が景気後退に直面し、株式市場が低下を続け、インフレと高金利が家庭の緊急時の貯蓄を減らす中で家計のやりくりが難しくなれば、最高経営責任者(CEO)らが米国での雇用を減らし、コストが低い他国での雇用を考え始めるのは時間の問題だ。
大規模な遠隔勤務を管理する盤石な技術基盤があることは既に証明されている。コスト削減をにらむCスイート(経営トップ層)の役員は、コストが高い都市でのリースが切れたら喜んで物件を手放すだろう。
シリコンバレーのテック系大手の株価が急落する中、こうした企業は数千人の労働者に無料の食事やマッサージ、洗濯サービスなどの素晴らしい福利厚生を提供することがもはや合理的ではないと気づくかもしれない。
環境・社会・統治(ESG)の擁護者は、人々が毎日オフィスに通勤しなくてよいことを歓迎するだろう。その次は、報酬が高い遠隔勤務のソフトウエアエンジニアを、コストが低い国の同等の人材で置き換えることになるはずだ。