左が第10世代iPad、右がiPad Air、画面サイズや解像度、最大輝度は同じだが表面仕上げや構造が異なる。
第9世代併売の上で第10世代は値上げの意図は?
アップル製品のファンならば、ほとんどの場合、アップルがドルベースの価格帯を維持しながらラインナップを構築していることを知っているはずだ。戦略上の理由や機能強化に伴うコスト上昇などで変わることもあるが、ほとんどの場合、後継製品は同じ価格で提供され、旧モデルが併売される場合は値下げされる。
しかし今回のiPadは例外で、第9世代iPadの価格はそのままで併売され、第10世代iPadには120ドルのプレミアムが乗せられている。
第9世代iPadは教育市場および業務用端末として重要なデバイスとなっており、ホームボタンの配置や全体の使い勝手、あるいは画面の縦横比や保護ケースなども含め、大きくは設計を変更できない、あるいは変更するとしてもある程度のリードタイムが必要な製品だ。この市場が本来の”タブレット端末市場”と言われてきた領域だが、ここからさらに踏み込んで、よりパーソナルな生産性を向上させるための、あるいはクリエイターにとってのプロフェッショナルなツールとして、アップルはiPadを拡張してきた。
iPad Proと名付けられたiPadは、当初はキーボードとの組み合わせで文書作成やメールなどのコミュニケーションを円滑する端末として始まり、そこに高精度なスタイラスペンであるApple Pencilを加えて発展させ、2018年からはプロフェッショナルクリエイター向けの端末として、改良を重ねてきている。
これと並行し、より作業性を高めるために基本ソフトウェアの充実も図ってきた。
かつてはiPhone用のiOSと共通だったが、現在はiPadOSとして独立。基礎部分は共通だが、マルチウィンドウでの操作や日本語入力機能の強化、標準アプリの機能強化やユーザーインターフェイスの強化などでiPad独自の進化を重ねてきている。
その世代を重ねるごとに、iPad Air、iPad miniと、iPadファミリーの他カテゴリ製品にiPad Proのエッセンスを盛り込んでいる。そして今回のモデルチェンジで、とうとうその流れがサムネームを持たない第10世代iPadにもやってきた。