日本はなぜ幸福度が低いのか? キーワードは「寛容さ」

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国連が3月に発表した「世界幸福度ランキング2022」において、日本の順位は54位と、先進諸国の中で最低順位に位置しています。この結果を詳しく見ると、「人生の選択の自由度」と「他者への寛容さ」の数値が目立って低く、その他の項目、「一人当たりの国内総生産(GDP)」、「社会的支援」、「健康寿命」に関しては、ランキング上位国とさほど大差がありませんでした。

つまり、客観的ウェルビーイングは高いにもかかわらず、主観的ウェルビーイングが低いということが分かります。国民それぞれが抱く「主観的幸福度」についても、1位のフィンランドの2.518ポイントに対して、日本は1.487という結果が出ました。

世界と幸福度格差を埋めるためには、自分の人生を自ら自由に選択できていると実感できることと、立場や意見の違いに対して理解を示し合う他者への寛容さ、の2点が日本の重要課題であることは間違いなさそうです。

日本の幸福度を高めるには?


主観的ウェルビーイングに関して、史上最も長期にわたり追跡調査をした研究、ハーバード大学の成人発達研究からもヒントを得ることができるかも知れません。経済的、社会的に異なる背景を持つ約700人の対象者を1938年から75年間にわたり追跡し、対象者の心と身体の健康状態を調査したこのプロジェクトの目的は「幸福と健康の維持に本当に必要なものは何か」を明らかにすることです。

「75年間にわたる研究からはっきりと分かったこと、それは、私たちを幸福で健康にするのは、富でも名声でも無我夢中に働くことでもなく、良い人間関係に尽きる」── ハーバード大学心理学教授、ロバート・ウォールディンガー博士

そして、大切なのは人間関係の質であり、数ではないということ。この温かな人間関係を築くうえで必要となるのが、自分と意見や立場が異なる人たちに、どれだけ理解を示すことができるかという「寛容さ」。やはり、日本人が実感として豊かさや幸福感を感じられない理由として先にあげた要因が、ここでも関係しています。

今後50年、かつてない少子高齢化の時代に突入する中で、気候変動、資源の枯渇、格差や分断など重要な地球規模課題に直面しながら、すべての人が豊かさと幸福感を実感できる社会を構想していくことが迫られています。

さらに、その社会を、豊かさと持続可能性が両立するものとして構築していかなければならないのです。日本は今、世界に先駆けて、高齢化、少子化などの課題に直面する国として、課題解決先進国となると同時に、一人ひとりが幸せを実感できる社会という、世界が共通して目指すべき未来を実現する先駆者としての役割を果たすチャンスを手にしています。これを叶えるためには、日本固有のアプローチを早期に確立、実践する必要があるでしょう。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)



連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Naoko Kutty, Digital Editor, World Economic Forum

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