DXに有効な手法「アジャイル型開発」、でもいきなりは使えない──
──AVILENとJPデジタルが制作した動画教育コンテンツの一部を拝見しましたが、飯田社長もDX概論の担当されていました。取り組みへの熱意のみならず、内容も「JPビジョン2025」の浸透から丁寧に取り組まれている印象がありました。伝えたいこと、心がけていたことはありますか?
JPデジタル飯田社長:冒頭でも申し上げましたが、私は日本郵政グループに参画して最初に感じたのは「異国の地の企業」に来た感覚でした。それは、良い意味、悪い意味、両方を含めてです。揶揄しているわけではありません。全国民が利用者であるが故、安定したサービスを提供しなければいけません。
日本郵政グループは「日本郵便」「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」を通してサービスを提供していますが、2021年度郵便物等総物数は191億9273万通あります。ゆうちょ銀行の総貯金残高は合計で約193兆円、かんぽ生命の保有契約件数(個人)は約2283万件あります。
DXの手法の一部に関連して補足すると、一般的には仕様や設計を100%決めずに、細かい修正を繰り返して製品やサービスのクオリティを上げる「アジャイル型開発」や「PDCAサイクル」が取り入れられていますが、日本郵政グループで、これらをいきなり取り入れると、現場の混乱が生じた際、利用者である全国民に影響しかねません。
一方で、製品やサービスのクオリティを上げることは、企業としての大命題でもあります。その起点として、まず日本郵政グループに改めて伝えたいのは「顧客視点を持つ」、ここからと考えています。利用者にとって本当に使いやすいサービスであるかどうか、そこに立ち返りたい。
そして、「日本郵便」「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」のサービスを提供する窓口の一つである郵便局は、全国に2万4千か所あります。これは、いまだコンビニエンスストアの事業社一つが持つ店舗数よりも多いです。これほど利用者との接点を持つサービス事業提供者は、稀有、且つ重要な責任を担っていると認識しています。だからこそ、顧客視点を持って、使いやすいサービスを提供し、体験価値を向上し、顧客満足度(カスタマー・サティスファクション)を上げる。ここが取り組みのフォーカスになります。
日本郵政グループでは、リアルの郵便局ネットワークとデジタルを融合した「みらいの郵便局」の実現に向けた取り組みを始めています。2022年7月からは大手町郵便局を実証実験郵便局として、さまざまな顧客体験の導入・検証をしながら、新しいアイデアを生む場として活用しています。今後は、既存の郵便局をベースに、マーケットのニーズに応じた施策の展開や、郵便局の提供価値に特化した、コンセプト店舗なども実装していく予定です。
また、繰り返しになりますが、日本郵政グループの出自は郵政省であり、働いているメンバーには、元国家公務員もいます。そのDNA・矜持も生かして、顧客満足度を上げていきたいですね。