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2022.10.18

置き配指示で置き配されない深いワケ。再配達率削減なるか

Getty Images

「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」の施策の進捗状況によると、2020年策定時10%程度であった宅配便の再配達率が、2021年には11.6%に上昇している。物流のはらむ課題の中で「担い手にやさしい物流の実現」を目標に国の政策の一部として、2025年には7.5%を目指すものだ。皮肉にも1年目は削減どころか増加してしまった。

2020年から2021年にかけては新型コロナウィルスの影響により、インターネットショッピングの利用が拡大した背景があり、仕方がないという見方もある。しかし同時に、在宅ワークも増えていたはずの時期になぜ、再配達率は増えてしまったのか。どうすれば、ここから減らしていけるのか。

置き配の利用は2019年から2倍に


ある調査では2021年の段階で置き配の利用率は53.9%に達し、2019年の値の2倍におよぶ結果となった。2020年にAmazonが置き配を「標準」としたことや、各運送会社も導入を始めたこと、加えて一般消費者側も非対面接触を求めたことに起因するだろう。時間や行動が制限されないメリットも大きい。一方で水濡れ、盗難、不在を明らかにしてしまう不安などの課題は残る。

「何を重要視するか」ー考え方にもよるが、デメリットを恐れてある程度のリスクを許容しないのは、新たなリスクも生み出しうると筆者は考える。一般消費者の理解なくして、配達料金の値上げ、および物流品質の低下は避けられないからだ。

ネットスーパーでは500円近い再配達料金も


そもそも「再配達」は無料にしては、手間のかかりすぎるサービスだ。宅配ドライバーの仕事は1個あたりの配達完了で数百円ほどの利益になる業務委託契約が存在する。そんな中で時間指定で再配達の指示があるたび、ルートを組み直し、荷台から再び商品を探し、納品先へ向かう。2度も3度も足を運ばせるほど、一般消費者である私たちはサービス料を支払っていないのだ。

鮮度が重要なネットスーパーの配達では、すでに500円に近い再配達料が設定されているサービスもある。今のところ通常の宅配に至っては、ドライバーたちの努力によりまかなわれている物流だが、人手不足を理由に再配達料金の設定を求める声も挙がっている。

増える置き配グッズから見えるニーズ


そうはいうものの、本格的な宅配ボックスの設置が家庭の出費としては、痛いのもよくわかる。商品購入時から置き配指定ができるネットショップもまだ多くはない中で、運送会社のアプリやWebサイト経由で必ず受け取れる日時や配達方法に変更するのも少々億劫だ。と、なると置き配のお願いをもっと簡単にできれば良いのではないだろうか。

最近では「置き配のお願い」に関するステッカーやプレートが100円均一などでも手に入る。他にも簡易受け取りBOXや鍵のかけられる受け取り袋、数々の商品が出ているところから「できれば置き配で頼んでみたい」ニーズが垣間見える。
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文=田中なお 編集=石井節子

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