置き配指示をしたのに持ち戻りされる深いワケ
しかしここでひとつ疑問が生まれる。「置き配と指定したにも関わらず、持ち戻りにされた」という声が一定数あるのだ。これらの商品を利用すれば、購入時に置き配を指定していなくても、指示が可能なのだろうか。元大手宅配ドライバー武内氏に、実情を聞いた。
「私が勤めていた営業所のルールでは、去年から玄関先にステッカーやプレートを置いただけの置き配指示には従えなくなりました。といいますのも、泥棒が人の庭先に勝手にステッカーを貼り、盗難された事例があるからです。あとアパートやマンションですと、部屋番号はあっても表札はないことが多いですよね。部屋番号を間違えて注文しているケースもあるので、受取人さんと面識がない限り、電話が繋がらなければ、私は置き配をしないようにしていました」
やはり運送会社としてもリスク管理の観点から、指示に従えないケースもあるらしい。加えて「道路に面している1階の目立つ玄関に関しても、受取人と面識がなければ置き配しない判断をしていた」といい、運送会社側もかなりリスクに配慮している印象だ。
置き配メッセージボード「シジスル」も販売
「ただ受取人様から確実な指示があれば、ドライバー判断のもと、置き配も可能です。たとえば顔見知りの配達先、電話で再配達時に置き配の指示を受けた場合、ステッカーのようなものであっても受取人様のサインがある場合などです。基本的には(Webサイトなどを通した正式な指示がなければ)置き配はNGとお客様に伝えたうえで、極力ご意向を優先するよう言われていました」
要はドライバーの裁量によるところが大きく、地域のドライバーと受取人の信頼関係により、面倒な手続きを踏まずともアレンジが可能ということだ。元ドライバーの武内氏は現場の声をもとに置き配メッセージボード「シジスル」を販売している。受取人が名前を記載するスペースがあり、さらにボードについているリボンの一方の端を玄関内側のドアノブと結んで繋げておくことで、第三者の介入なく、受取人の家に住む人からの指示であると示す仕組みだ。ドライバーが間違いなく「受取人本人による直接指示」と判断できる商品だという(*ただし現状「シジスル」についても、各運送会社が必ず置き配できると認証した商品ではない)。
元ドライバーが開発、販売する置き配メッセージボード「シジスル」
自転車のかごやガスメーターボックス、車庫、物置などさまざまな場所に置き配が可能なサービスが増えている。誕生日プレゼント、仕事や学業に必要なもの、どうしても今日受け取りたいけれど、受け取る暇がない配達への対応として、置き配をひとつの選択肢として持つのはどうだろうか。そのために地域のドライバーとの関係づくりや使えるツールの導入が手段として考えられるのかもしれない。
田中なお◎物流ライター。物流会社で事務職歴14年を経て、2022年にライターとして独立。現場経験から得た情報を土台に、「物流業界の今」の情報を旺盛に発信。企業オウンドメディアや物流ニュースサイトなどで執筆。